住宅生産団体連合会・成熟社会居住研究委員会では、(一財) 高齢者住宅財団前理事長、(一社) 高齢者住宅協会顧問の高橋氏による、「人生100年時代 これからの住まいとケア〜国交省サ高住懇談会での議論等を通じて〜」とのテーマでの講演を伺いました。
2006年の介護保険改正で、医療・介護・福祉の統合としての地域包括ケアという概念が拡張され、住宅がその中に入ってきました。これは大変有名な言葉で皆さんもご存じだと思いますが、「福祉は住宅に始まり住宅に終わる」という言葉があります。日本の場合は住宅供給は民間がやってきて、残りのところを公営住宅が供給し、中間に公社公団の住宅があります。基本的には経済成長で人口移動は起こりましたから、人口の器、収める場所をどういう風につくるかというところで、住宅産業が急激に伸びてきました。そして賃貸住宅も含めまして、地域の大工さんが住宅をつくるものだったのが、ハウスメーカーがつくるようになりました。
日テレの超高層ビルの大反対運動が起こっていると東京新聞で出ていましたけど、やっぱり日本の事業者は景観を考えないで勝手にそれぞれの個別の趣旨で進めるところがあり、それをどういう風に考えたらよいかが大変な問題であろうと思っています。
家というのは大体30年から40年間使うものです。集合住宅はさらにロングライフです。未来志向型の仕事であるにも関わらず、意外と足元のことしか考えないのは、消費者もそうだし供給側もそうではないか。ましてや高齢者向けの住宅、とりわけ介護付きの住宅は、あれはがんじがらめの規制がかかっていて、住宅の在り方というのはきちんと考えられていませんでした。それを突破しようとしたのが外山義氏で、ユニットケアという概念を生みました。その思想が高齢者の住まいにうまく入っているのかも考えていかなければならないのです。
「LIFE SHIFT」というイギリス・アメリカで大ベストセラーになった本を、今年東洋経済社が訳して「超訳ライフシフト100年時代の人生戦略」というタイトルで出版しました。人生100年時代には生きるか死ぬかという間に、病と老が入ってきます。生殖可能年齢、要するに子孫を残す、生み終わるとその個体はいなくなるというのが生物の原則であります。そうしないと食料が足りなくなりますから、人口増・個体数は常に一定でなければならないため、たくさん子供が生まれる生物はたくさん死ぬのです。魚類なんていうのがそうですが、それが哺乳類になると子供の数が減っていきます。人間は今や子供をつくらなくなってきて、次の世代に人を残す、その場所がまさに住まいであることはもちろんですが、生殖の場のパターンが変化したということと、もう一つ重要なのは病気が死にすぐ直結していたことです。そこに病を持ちながらも生きながらえる「老」という概念が入ってきました。お釈迦様の言葉ですが、命を育み、命を全うする、その中で暮らしを営む、さらに人生という時間のタイムスパンで経過します。その中で、器としての住まいというのがどういう役割を果たすのかという議論は、建築家と社会学者と福祉学者でそれぞれ議論しています。最近では、地域包括ケアの議論で住まいと住まい方というので分けるようにしています。これは大変重要な議論で、国交省の住宅局ベースの話で言うと、住生活基本計画・住生活基本法となっていますが、その前は住宅建設計画というハードとしての計画でした。そのため、ソフトでありますが頭はまだハードになっています。国交省の住宅局というのは、基本的に住宅基準行政が過半を占めていて、建築基準法は昭和20年代にできたものがそのままになっていて、省令をくっつけていったという驚くべきものです。昭和20年代に学校の寄宿舎とか会社の寄宿舎というのが別の形でいろんなものができていますが、それが例えば高齢者の集合住宅で寄宿舎という概念ができています。