受賞者名 吉村徳政
高田典夫 / アトリエテン
作品名 LinkS./透明感のある集合住宅


●まちなみ配慮のポイント
ファサード
 かすかに緑がかったファイバーグレーチングによるスクリーンが中間領域としてのバルコニーを演出し、内部に対しても、外部に対しても、曖昧な空間をつくり出しています。並木として歩道に植えられているトウカエデはあまり色気のある樹形ではありませんが、その緑が映し出されたかのようなファイバーグレーチングのかすかな緑はこの建物にさりげない色気を添えて、その前を通る人々に楽しさを与えてくれます。

歩道〜中庭
 歩道側に植栽した緑によって歩道はより魅力的な物となり、またその緑は中庭まで入り込んできていて、集合住宅の中にまちなみが入り込んでいるようなデザインとなっています。

講評
 集合住宅を町並みの問題として考えると、いつも二つの問題に直面する。一つは、片廊下型の平面計画の場合の廊下側の立面の扱いである。何とも寂しい面になってしまう。公共通路に部屋が直に面しているのでどうしても面格子等が邪魔になる。もう一つはバルコニーである。集合住宅ではバルコニーは唯一専用外部空間で、そこは南庭であり同時にサービスヤード (=物干し場) である。一方はともかくとして、他方は塀に囲まれていたほうがよい。それが南に向かってデカデカと開いてしまう。この集合住宅では、前者の問題は入り口を中庭側にもってくることで解決し、後者の問題に対しては開口をガラスブロックとするか、透明のときは前面にFRPのグレーチングのスクリーンをおくことで解決している。いずれも、美しくまとまっているだけでなく、幅員の広い道路環境に対する防御としても合理性を持っている。

「まちなみ住宅」100選 審査委員会
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