講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


6. 駅が繋ぐ絆
鈴木:  駅舎のシフォンケーキ屋として、どの様なコンセプトがあるのでしょうか。メニューを見ると「資本ケーキ」と書いてあったりしますが…。
久永:  エンターテインメントとしての駅というか、人を喜ばせるための駅を考えています。「資本(シフォン)ケーキ」という当て字は、ある友人がシフォンケーキは「久永屋の唯一の資本だ」と言ってくれたことに由来します。
松村:  駅舎でやっているのがいいですよね。人通りの多い都会でカフェを開くのとは大きな違いがあります。
久永:  自分では長陽駅を守っているという意識はなかったんですが、色々な縁を駅が繋いでくれています。駅に歴史があるので、熊本地震が起きた時はテレビなどが取り上げて下さいました。すると、長陽地区におじいちゃんやおばあちゃんがいらっしゃる方から「駅を守って頂いて本当にありがとう」といったお手紙を頂きましたし、「直接買いに行けないけど、注文するからケーキを送ってください」といったお手紙も頂きました。ちなみに駅舎の地震被害は、壁に少し亀裂が入った程度です。構造補強のおかげですが、ここは周囲より一段高くなっている場所なので、おそらく地盤が良いことも幸いしたようです。
鈴木:  景色がいいですよね。稲穂が実る季節は格別でしょうし、春になれば桜のトンネルが見られますよね。
久永:  四季折々で違う表情が見られるので、テレビ撮影などもよく来て下さいます。「家族に乾杯」のロケで俳優の大地康雄さんがいらっしゃった時には、「田んぼの実りは豊かさを象徴している。田んぼが整備されているから豊かな安らぎが生まれるんだ。村の人に感謝しなくちゃいけないよ」と言って下さいました。
松村:  最後に今後の見通しをお聞かせ下さい。駅舎のカフェを一生続けて行く感じでしょうか?
久永:  実はそこまで肩肘張っているわけでもないんです。今日も若い人が一緒に働いていますが、店をやりたいという方も多くいらっしゃる。駅を残す形で誰かが引き継ぐのであれば、いい形でバトンタッチできればとも考えています。



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