講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


3. 廃寺再生を通して学んだこと
奥村:  佛子園の転換点となったもう一つの施設が、小松市野田町にある「三草二木西圓寺」です。このプロジェクトでは廃寺を地域のコミュニティ施設に再生しましたが、実はこの取り組みの少し前に、私どもの活動を見直す出来事があったんです。法人本部のある行善寺近辺で障害者のグループホームを建設しようとしたところ、「取り組みの大切さは分かるけど、他の場所にしてくれないか」と地元から反対を受けた。
自閉症に対する理解を広めるため、20数年にわたってシンポジウムやバザーを続けてきましたが、理解は広まっていなかったんです。私どもは大いに反省させられました。地元に開いた施設づくりに努めてきたつもりでしたが、本当に必要だったのは障害児一人ひとりを理解してもらうことだったんじゃないかと。そこで年1回のバザーは取り止めまして、職員も子供たちも日常的に地域に出ていくようにしました。挨拶や清掃は当然のこととして、町内会の集まり・防災訓練・バス旅行など地元のあらゆる行事に参加するようにしたんです。
私どものこうした意識変化とほぼ重なったこともあり、三草二木西圓寺の取り組みから色々なことを教わりました。例えば、福祉施設の職員は「何かあったら大変だ」と先回りしがちですが、障害者にも高齢者にもそれぞれの役割があるんですよね。福祉施設にはお世話する側とされる側がいますが、お世話される側として扱われた時点で残存能力が減っていくんだと思います。やり過ぎない福祉の大切さに気付かされました。



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