講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4.田舎暮らしのイロハ
西岡:  田舎暮らしでは、お隣さん同士がお互いの生活パターンを概ね分かっていて、夕方に電灯が付かないと心配したりします。そうした暮らしに抵抗がなければ隣家がある空き家を紹介できますが、ちょっと厳しいとなると一軒家を探すことになります。どちらにせよ、自動車か単車に乗れなければ生活は成り立ちません。
松村:  そうした田舎暮らしの特徴は、移住希望者には最初から伝えているんですか。
西岡:  お話ししています。言いすぎると移住を断っているように聞こえてしまいますが、最初からマニュアルをお渡ししています。

松村:  とても具体的に書いてありますね。マニュアルの最後に載っている「これだけは言わせて!!」を見ると「挨拶をしましょう!」とまで書いてある。
西岡:  案外、これがうまくできないんです。都会に住んでいれば、初めてすれ違った人が自分のことを知っているなんて想像さえしませんよね。でも、移住者は注目の的ですから、地域の人は全員知っていたりする。それなのに挨拶をしないと「礼儀がなっていない」ということになったりする。
松村:  今までに様々な行き違いがあったようですね。「お宅にお邪魔する際は脱帽しましょう」とか「(敷居は)踏まずにまたいで下さい」といったことも書いてあります。
西岡:  一人の移住者の行き違いで、全員がそういう風に見られてしまう。例えば、土曜や日曜が休日でない方は、地域の行事に参加できません。ご夫婦のどちらかが参加すればいいんですが、両方参加できない時にどう対処するか。地域のまとめ役に聞いて役割を済ませておくという対応もありますが、地域の考え方によってはそれじゃ済まないところもある。
松村:  紀美野町では、そうした諸々の行き違いを収めるのもワンストップパーソンの役割のようですね。
西岡:  引っ越しの挨拶回りの際、洗剤を粗品として持っていくことも少なくありません。ところが、ある地域では「せっかくの縁を泡にしてしまうようで縁起がよくない」と言われてしまった。それ以後、定住の会では砂糖をお薦めすることにしています。「甘いお付き合いを」ということで。
松村:  近所づきあいは都会のマンションでも気を遣いますが、そこまでの配慮はしませんね。
西岡:  田舎暮らしのコツは少し遠慮することだと思いますが、さじ加減が難しいと皆さん言われます。もちろん遠慮に欠けてはいけないが、遠慮しすぎると相手に不快感を与えてしまうかもしれない。



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