講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


3.移住者の住まい探し
松村:  定住の会は移住者が住む家も紹介しているようですね。
西岡:  家を案内する前に、まず地域に対する理解を深めてもらうようにしています。紀美野町には、谷間から山のてっぺんまで様々な立地があります。空き家も賃貸向けに作られているわけではありません。定住の会としては、空き家になって廃れていくだけなら貸してみたらどうかという立場ですが、そうした家に住むには100万円以上の改修が必要になる場合が大半です。この様な諸々の事情も理解してもらってから家を案内することになります。
松村:  具体的にはどの様な手続きになるのでしょうか。
西岡:  最寄り駅までお迎えに行って町内を回ります。その際、「何度も来てしっかり見てください」とお話します。遠方から来られる場合はなかなか難しいことは分かっていますが、後になって「こんなはずではなかった」と後悔してほしくはありませんからね。紀美野町への移住を本格的に考え出した方には、短期滞在施設で生活を体験して頂くよう勧めます。

松村:  そうした過程を経て、ようやく具体的な物件案内が始まるわけですね。
西岡:  条件を聞いて探していきますが、希望通りの空き家はなかなか見つかるものではありません。思いがけない改修費が必要だったりもしますから「古民家を300万円以上出して改修するより、1,000万円で20坪ほどの土地に家を建てませんか」といった提案もしています。紀美野町が気に入って建物に投資をするのなら、いっそのこと新築しませんかというわけです。
松村:  それは借地ですか。
西岡:  そういう方法もありますし、土地購入もできます。また、紀美野町では定期借家を利用した空き家の借り上げも検討しています。町が空き家を10年や15年という期間で借り上げて、改修費を家賃で回収してからオーナーに返す方式です。家を借りた人が借家期間を超えて住む場合は、オーナーとの契約に切り替えます。
松村:  移住者の皆さんは他の候補地と比較して紀美野町を選んでいるのでしょうか。
西岡:  いくつか見てくる方が多いですね。ですから、こちらの側の推しが最終的な決め手になったりすることもあると思います。
松村:  賃貸借契約を結ぶとなると専門家が必要ですよね。
西岡:  もちろん宅建業者の仲介が必要です。移住者の住宅の賃貸借契約書は、和歌山県が作成した雛形を活用しています。移住後に転出する場合や途中で移住を辞退する場合など、様々な事態が考慮されています。



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