講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


3.アーティスト・イン・レジデンス
大南:  1997年に徳島県が策定した「徳島県新長期計画」の中に、「とくしま国際文化村」という計画が含まれていました。神山を中心とした地域に国際文化村を作る計画ですが、県がずっと管理・運営するとは思えない。10年後、20年後には住民による運営が求められるだろうと考えてみると、単に与えられたものでは上手くいきそうにない。そこで、国際交流協会の仲間と話し合って、環境とアートを柱とする提案を地元から出すことになりました。環境の提案はアドプトプログラムにしました。国県道を2km区間に区切ってスポンサーをつけ、行政に代わって掃除をするという内容です。一方、アートは芸術家村を提案しました。アーティストが住む場所やアトリエを準備する程度なら、ほとんど投資せずに自分たちの力でできますからね。

その結果、1999年から始めたのが「アーティスト・イン・レジデンス」です。このプログラムでは、日本人1名と外国人2名の芸術家を毎年招待して、住民が製作を支援しています。現在はアートによるまちづくりが全国的に広がっていますが、ほとんど場合、有名なアーティストを呼べば自動的に観光客が来ると考えている。言わば「ミニ直島」を目指している。
鈴木:  ミニ直島という表現は一発で伝わりますね。
大南:  有名アーティストを呼ぶにはお金がかかりますが、神山に資金はありません。アートを評価する専門家もいないので、マネしても敵いません。そこで、滞在したアーティストの満足度を高めようと発想を変えました。僕たちはお遍路さんをもてなす「お接待」という文化を持っていますからね。

アーティスト・イン・レジデンスが始まって6年も経つと文化庁の補助金も切れたので、自立できる仕組みを考えることになりました。毎年100人くらいの応募がありますが、落選者に「宿泊とアトリエの場所さえ用意したら、自費でも来たいか」とアンケートで聞いたところ、「来たい」という回答が8割を占めていた。そこで自費滞在できる仕組みも追加して、今日に至っています。




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