講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5.ハードの再生・ソフトの再生
森田:  払い下げ時に組合が組んだローンの返済が1977年に完了します。すると、すかさず新たに1750万ドルを借り入れて大規模修繕に取り掛かります。無秩序な増改築による資産価値の低下、かさむ光熱費、治安の悪化などが原因で、当時は1600戸の約1割に当たる150戸に買い手がつかないという状況に陥っていたためです。主にセントラルヒーティングから個別冷暖房への転換や外壁の外断熱化といった改修工事を実施して、この大規模修繕は1984年に完了します。

全住宅を対象にしてそうしたハード面の改善を実施する過程で様々な問題が浮上しまして、実はこの時期に管理のあり方や転売ルールなどの再生も図られます。例えば、住戸の譲渡要件が厳格化されました。売却の際には250項目ほどが組合によって審査され、その基準を満たさないと売ることができません。そのため増築管理プログラムも導入されました。居住者が個別改変した部分の管理責任は各居住者に帰属していて、かつては増築部分も同様でした。しかし現在では増築部分は組合の資産として登録され、法人が管理を担うようになっています。増築部分の所有を組合が引き継ぐ代わりに、居住者は責任をもって組合審査を満たすしっかりした増築をする仕組みが作られたわけです。

こうしたGHIの取り組みは、「変化を許容する空間マネジメント」とまとめられます。変化を許容していることから、例えば増築部分の管理といった曖昧な問題が浮上し、その問題に取り組むことによって組合所有という団体的性格も明確化されていく。そしてそうした組合との共同所有関係という全体性を考えないと個人の資産がはっきりしない。組合所有では、こうしたマネジメントのあり方も展開できるということが、グリーンベルトの事例から学べることかと思います。



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