講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


6.旧練成中学校の活用プロジェクト「3331 Arts Chiyoda」
松村:  今日は私たちが中村さんの取材に伺いましたが、ここ「3331 Arts Chiyoda」は閉校した旧練成中学校の改修運営を千代田区が公募したものですよね。中村さんを中心とするグループが選定されたわけですが、さすがにこの規模になると30坪のアトリエを運営するのとは勝手が違うんじゃないですか。
中村:  3331 Arts Chiyoda」ではオルタナティブなアート活動をしてきたcommandNからcommandAという会社を作りました。これまでのプロジェクトは非営利な活動でしかもスキルをシェアするので人件費はあまり派生しなかったのですが、このスケールになると人件費だけで半年に約1000万円が消えていく。こうなるとこれまでの様にアートという特権的な立場だけでは対応できないので、社会の中の一般的なシステム、つまり原価計算をして製品を作って売って利益を出す「会社」というシステムになった。元来アーティストというのはこうした計算をせず生産をする人たちなんですがね。

もっともどうやって稼いでここを回していくのかを考えることはとても勉強になっています。3331のコンセプトは「文化芸術活動と社会活動をクロスさせ新しい創造的なフィールドを生みだしていく」ということです。モデルにしたのは初期のパルコです。パルコというと一定のイメージがありますが、実際は色々なブランドの寄せ集めが一丸となって形成していったイメージです。そうした感じが理想的で、プラットホームの設計と言いますかブランディングとしての全体活動が、1つ1つの自律的な活動と結びついてより新しい価値を生み出していけると考えています。
鈴木:  プラットホームの設計とおっしゃいましたが、もう少し説明して頂けますか。
中村:  プラットホームは乗り換えをする場所なので、プラットホーム自体が主張をしだすとうるさい。安全性とか乗り換え易さとか、そういう基本的なことが大切です。3331 Arts Chiyodaはアートのプラットホームだけでなく、地域に開かれたプラットホームにしたいと考えているので、活動が活発でも敷居が高いとまずい。これに関しては空間の雰囲気はもちろんですがプログラムで引っ張って来るしかないので、地域のおじいちゃんおばあちゃんが訪れられる催しを開いています。例えば旧練成中学校の同窓会と町内会は最優先事項なんです。これだけの場所を使わせて頂いている限りはそうしたつながりがないと絶対だめだと思います。東日本震災の当日には3331がこの周辺の帰宅難民の受け入れ拠点になりましたが、そういうことはもともと意図していたことでもあるんです。



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