(2) 住宅市場の現状
- 現在日本には約6,200万戸の住宅ストックがあります。そのおよそ6割が持ち家でおよそ4割が借家です。そしてストックのおよそ14%にあたる849万戸が空き家となっています。
- フローとしては、現在、1年あたり80万戸前後の新規住宅の建設が行われています。ざっくりと申しますと、今のペースですと住宅ストックは70〜80年の間に (6,200万戸÷80万戸=77.5年) 建て替わるということになります。
- かつて戦後の住宅数が足りない時代には、1世帯1住戸を目標に、毎年100万戸以上の住宅供給が進められていました。1968年 (昭和43年) に全国での1世帯1住戸が達成され、1973年 (昭和48年) には各都道府県での1世帯1住戸が達成されました。
- 現在の日本は人口が減少し、やがて世帯数が減少する時代になろうとしています。これは、新しい住宅を供給しなくとも、空き家が増えるということを意味します。総務省が5年毎に実施している住宅・土地統計調査では、2013年から2018年の間に空き家が820万戸から849万戸と、29万戸増えています。この間、居住世帯のある住宅は151万戸増え、新規で470万戸住宅着工が行われていることを考えますと、空き家発生数=着工数ー居住住宅増加数ー住宅滅失数から、5年間で290万戸程度の住宅が滅失されたという計算になります。
- さらに、カーボンニュートラルな事業でなければ投資しないということが世界的な潮流になりつつあります。空き家と併せて、こうした世界的な潮流を住宅市場でどのように受け止めていくかを考える必要があります。
(3) 住宅団地再生の方向性
- コロナ禍を経て、テレワークやWEB会議が拡がり、デジタル関連の新しい技術が普及するなど、社会が大きく変化しつつあります。医療や見守りなどデジタルで合理的に進めることが検討されています。我々行政も、世界的な気候変動問題への対応やデジタル化促進による生産性向上などを進めていますが、省エネ・バリアフリーの住宅といった、以前の住宅では満足できない、新しい住宅ニーズが生まれています。郊外住宅団地も同じ文脈で考える必要があります。少子高齢化・人口減少時代において、多様な価値観と住まい方、新しい住まい方へ対応し、豊かに暮らせる住宅団地づくりが求められています。
- 住宅団地はもともと勤労・通勤者のファミリーを対象につくられたということがあり、若者・子育て世代が働く場や、高齢者の生活を支える施設などが不足しているために、多様な世代が生活するという面で課題があります。人間が成長して変わるように、住宅団地も変化し、新陳代謝することも必要ではないかと考えられます。就業・交流・医療・福祉等の機能やデジタル技術を導入していくことが大事になると考えられます。そしてハードの整備に加えて、新しい人たちや住んでいる人たちが、これまでの勤労とは別の形で、担い手・プレイヤーとして地域貢献することが大事になると考えられます。