地域住宅団地再生事業に関する勉強会


大和ハウス三鬼氏:弊社では、三木市緑が丘ネオポリスや横浜市上郷ネオポリスなどでの取組みを進めています。補助金に関しまして、まちづくりに必要な機能充実に必要との意見もあると思いますが、例えば介護サービスの住宅団地導入について、事業者は事業展開には問題はないが、建物を持ちたくないと言われます。弊社で建物を建てて事業者に賃貸するというやり方については、弊社としては数十年後にその建物を売却できるというところまでの事業スキームができなければ、事業には乗りにくいということがあります。これは補助金がついても同じと考えられます。他の住宅団地も同様ではないでしょうか。
国交省佐藤氏:事業者が建物を持てないということは重要な観点だと思います。対策となる仕組みを考えていきたいと思います。
ミサワホーム石塚氏:弊社では、川崎市新百合ヶ丘での取組みを進めています。弊社の事例から申し上げますと、公園・道路のような公有地の多様な利用を促すような制度ができないかと考えています。また、住宅地の用途規制を含めてのお話ですが、期間を限定するとか、各エリアのニーズに合わせるといったことから、仮設的な利用ができるような制度ができないかと考えています。民間事業者としては、事業として持続可能なものにすることが必要であり、建物改修や、現在東大で進めている玄関と道路の間のエッジデザインを取組みやすくするために、公共の利益に資するような使い方への補助等があるとありがたいなと考えています。1点お聞きしたいのですが、実は弊社の分譲地は30から50戸程度のあまり大きくないもので、そうなると周辺エリアや最寄りの商業地と一体となった取組が必要になります。地域住宅団地再生事業などのエリアの考え方として、周辺エリアや最寄りの商業地を含めるのかなど、行政側の判断で決められるのでしょうか。
国交省佐藤氏:地域住宅団地再生事業のエリア要件では、定性的なものはありますが、戸数等の定量的なものはありません。地方公共団体が対象となるエリアを実態に即してそれぞれ判断していただく制度にしています。
東急R&Dセンター塩田氏:地域再生法は自治体が申請するという制度になっていますが、自治体の規模や課題認識に差があり、住宅団地再生を取り上げないような自治体もあるかと思います。地域のNPO法人や一般社団法人が申請する枠組みといった、改善する方法やその見通しはないでしょうか。
国交省佐藤氏:現時点では市町村からの申請以外のルートは無く、ご指摘いただいたことについては、今後の検討課題と考えています。もし財源のことがあるから自治体が取り上げないということがあるならば、国の補助や交付金、企業版ふるさと納税のような方法を紹介していくことが一つの糸口になるかもしれません。
東京大学小泉教授:諸外国では中央政府にコミュニティが策定支援を依頼する事業制度があります。日本でも「まちづくり計画策定担い手支援事業」がありますが、運用当初は、自治体の同意がないまま国交省がコミュニティに計画補助を出して、その後の地区計画策定などがうまく行かないといったことがありました。コミュニティが気軽に手をあげることができ、自治体も後押しできるような制度があるといいなと思います。
東急R&Dセンター塩田氏:人口のあまり多くない自治体では、市職員のマンパワーも限られていて、業務が重なってやり切れなくなるようなことにもなるかと思います。申請をより円滑にする方法は無いかなと思います。
明治大学園田教授:今日は横串を通すことが住宅団地再生に必要というお話になりましたが、私は縦串の必要性も痛感しています。住宅団地には用途地域・地区計画・建築協定・建築基準法などが関わってきますが、既存建築物の活用を進めるときに、現在の建築基準法では動きにくいといったことがあります。横串と縦串の両方の検討をお願いしたいところです。

(4) まとめ (東京大学先端科学技術研究センター小泉教授)

 本日はとても良い情報をいただきました。制度の理解を深めるとともに、地域で再生を考えている方々の課題を吸い上げることができ、このような機会を今後も持つことの相互メリットが大きいということを感じたところです。住宅団地の全てを再生することは難しいと考えられますが、社会的投資が行われ、優良な住宅地として生きている団地は数多くあり、そういった団地をしっかり再生していくことが大切だと思います。本日のような情報・意見交換の機会を、今後も皆様にお願いすることになると思います。引き続きよろしくお願いいたします。


以上