東京大学高齢社会総合研究機構 (IOG)
ヘルスケアネットワーク (HCN) 研究会報告

「郊外における地域包括ケアシステムの見える化」

 

(5) 在宅医療体制の整備

 24時間の医療体制では、医者が24時間365日患者さんに対応する体制を整えることになります。医師1人あたりの在宅医療の患者数は100人くらいが上限と言われてますが、多い場合で200人くらい抱えている医師もおられます。そうすると夜間対応や緊急時の対応はなかなか対応できなかったりすることもあります。柏市では一人の在宅医師のサポート体制として主治医・副主治医体制や、バックアップ病院との連携で入院対応や退院後の対応などの責任役割体制を明確にすること、医療や介護の情報システムの連携や多職種による連携の場といったことを検討しています。

(6) 標準化の動き 〜地域包括ケアシステムの見える化〜

 日本の現在の高齢化率は平均28%程度ですが、地域によって高いところは40%。およそ50%のところもあります。地域の高齢化率はどのくらいで、介護認定率が周辺と比べて高いのか低いのかといった需要把握がまずは必要です。そして、そのニーズに対してのフレイル予防・健康支援、介護、生活支援、24時間在宅医療などを継続・安定して提供できることが必要とされます。このような需要とサービスのバランス、そして関係者間の連携システムを、地域マネジメントシステムとして標準化して、色々な地域で展開するということが、現在東大で進めている標準化の動きです。
 地域包括ケアシステムが機能し、そこに住みたくなる人が増え、地域の活性化が出て、サスティナブルな街となる。その一つの評価尺度として地価を考えており、地価の維持にこうした「システムの導入が必要だ」となることを定義づけしていきたいと考えております。
 地価評価への反映については、不動産鑑定評価基準への組み込みが考えられますが、一足飛びに基準に反映することは難しいようです。地域包括ケアシステムが機能している地域の地価が維持できているなどの事例と実績を積み上げていく必要があります。東大が中心となり、各企業や行政の方を交えてこれらの標準化の仕組みをつくるための協議会立ち上げるといった活動がスタートしております。時期が来たらご案内申し上げますので、皆様にも協議会メンバーとして入って頂きたいと思っております。
 こうした動きは社会的に本当に必要なものと思いますが、企業として取り組む場合、ビジネスチャンスがあるのかが、最大のジレンマです。先ほどフレイルチェックを半年くらいの間隔を置いて実施するとお話しましたが、例えばその半年間に企業が運営するスポーツ施設で運動するとこれだけフレイル予防に効果があるといったところにビジネスチャンスはあるかも知れません。フレイル予防産業というのは成長産業として魅力的ではあるのですが、デベロッパーや住宅メーカーとしてこうした産業にどう関わり合いを持つのかがこれから問われていくのかなと思います。こうしたことを皆様とこの中の研究会で色々議論していければなと考えています。