パネルディスカッション2018
成熟社会の住宅市場とハウスメーカーの取り組み

園田:本日、会場からいただいたご質問の中には、地域にハウスメーカー1社で入ることは難しいので、ハウスメーカーが連携して地域に入ることができないかというものがあります。
平山:そういう形で自治会などとお話されたらどうでようか。健生ネットワーク京都には大会社のOBがおられ、シニアのまちづくりにおけるお金のつくり方などもアドバイスしてくださいます。勉強会のようなやり方からスタートすればいいのではないかと思います。大学もたくさんありますから、新しい枠をつくっていけば連携できると思います。
吉田:ミサワホームでも50〜60代の持ち家層に、このまま成り行き任せでいくか、早めに住み替えるかのセミナーを全国展開していますが、全て満席になっています。兆しはできていると思います。自治会や市役所、居住支援協議会を通して、リフォームや住み替えのお話をすることはあると思います。
石沢:居住支援協議会を含む居住支援法人の取組みに、住宅会社が参加することは、これからの取組としてあるかと思います。本日のお話を伺って、ハウスメーカーが建物だけではなく生活の中に新しく乗り出していくことを考えました。
岸:弊社も介護サービス事業をやる中で、介護になる前の介護予防と健康維持にハウスメーカーが関わっていき、居住環境を整える、あるいはよろずサービスをすることが必要と考えています。しかしハウスメーカー一企業では、新築と違うもので、成り立たないビジネスとされます。 オアシスセンターの周りにはプレハブ住宅メーカーの家が密集しています。プレハブ住宅メーカーの居住者であれば、ある程度は経済力や住宅の性能レベルが一緒なので、効率的なリフォーム展開や、受け入れられるサービス単価の統一もやりやすいかと思います。密集していないと成り立たないような単価の小さなサービスですが、高齢期の暮らしを支える事業として、一企業ではなく、企業が連携して一緒に動くべきではないかと個人的に考えています。
園田:早めのリフォームで住み続けるということはシニアに届いていますか?
平山:今日のようなお話をしただけでシニアには伝わります。家を全部つくりかえるにはお金がかかりますが、それが既にできているものがサ高住ですというお話もします。リフォーム業者に少しずつリフォームしてもらうことはお金もかかるし、しんどいなあと考えておられます。
岸:前は外壁や太陽光のような売り切り型のリフォームでしたが、今は高耐久な住宅が増え、外壁リフォームは必要なく、内装リフォームが必要になります。これがお客様に伝わるかに苦心していて、議論するよりも体感してもらった方が早いなということでオアシス研修を行っています。お客様に伝えることは、今健康だからこそ、その健康をさらに伸ばすために今こそリフォームすべきであるということで、そのような前向きのトークができるように営業が変わったという反響が一番大きいですね。
園田:高齢者居住設計指針も、消費者に納得してもらう通訳というかインストラクターをつくるとその意味がストンと消費者に落ちて、動くようになるということでしょうか。
石坂:高齢者居住設計指針においても、早めの住み替えと同時に早めのリフォームもキーワードになるかと思います。早めに考えることの重要性が消費者に普及していくことについて、今年度の検討主題として考えていきたいと思います。
園田:会場からの質問の中には、住宅の用途変更に関する建築基準法上の規制が多いのではというものがあります。また郊外住宅団地に、集合住宅におけるファミリー向け住宅や駐車場付置義務のように、サ高住の付置義務ができないかという質問があります。
石坂:建築基準法の今回の規制緩和においても、ホスピスがつくりにくいなど不十分であるという意見があります。実際にホスピスに訪問してお話を伺いましたが、一方で事故や火災のこともありますので、ご理解いただけたらと思います。サ高住もこれまで約23万戸、有料老人ホームを含めると70万人ちかい数が建設されており、量の供給は終わったのかなと思います。サ高住を単につくるのではなく、今ある空き建物を使った場合に補助を手厚くする方向になっていますが、これからやりたいことは、まちづくりというか、面的に地域との協力を進めるための 地域の人が集まるたまり場を支援するようなやり方の重点化を考えています。
園田:ハードには国交省からの補助がでますが、ソフトの持続性を実現する上で、なんの応援もないことは辛いかと思います。企業がNPOや地域の色々な団体と連携する上での、ソフト面の応援はないでしょうか。応援といっても色々なやり方があると思いますが。
石坂:国交省からソフトにお金をだすのはなかなか難しくて、居住支援法人などへの補助も期間限定です。住宅団地の数が多すぎて全部の団地再生を国交省や地方自治体が応援することは、コンパクトシティの観点からも難しいでしょう。大和ハウスさんの三木市での取組みを通して、民間企業としては採算のとれない事業においても、住民が手伝ってくださることで民間企業が出ていくハードルの下がることがあるとのことです。住民ががんばるところでは、企業も入ることができるし、行政も応援できるかもしれないというお話にならざるを得ないと思います。
園田:最後にパネラーの皆様からお願いします。
平山:住宅会社として、受注の戦いを行う一方で、超高齢社会の日本をよりよくしていくために力を合わせて研究を継続していただければと思います。
岸:ハウスメーカーとして介護サービス事業をなぜやるのかが常に問われるのですが、介護サービスには住まいがとても大事ということを前提に事業展開をしたいと思います。介護業の人は介護しか分からず、建築業の方は建築しか分からないという縦割りでいると、そこに暮らす高齢者の暮らしは全く良くならないので ハウスメーカーの介護サービス事業を通して、建築と介護サービスの融合を増やして、高齢社会の壁を超える働きかけをしたいと思います。
吉武:1社で地域に入ることは難しいとのことですが、我々がK団地に入ることができたのは、明治大園田研究室と協力したことと同時に、当時の住団連担当部長が自治会の方と高齢化が進む団地での生活を実りあるものにするために一緒に考えましょうとお話されたことが大きかったと思います。ソフト面の応援については、例えば横浜市のまちづくりコーディネーターのような制度を広げることが考えられ、私もコーディネーターとして地域の支援を行っています。コーディネーターとして地域のシニアの皆様のレベルの高さを私も感じています。これからも地域再生に取り組んでいく所存です。
石坂:消費者にどう訴求していくかが大事だと思います。高齢者住宅の設計ガイドラインは消費者にうまく伝えていくことが必要です。早めのリフォームや住み替えをどう訴求するかを、国交省と住団連で一緒に考えていきたいと思います。これからもご協力をよろしくお願いします。
吉田:地域での居住継続のソフト面での支援について、小規模多機能や24時間対応、地域包括など介護保険も進んできました。家に住み続けたい方に、耐震診断と併せて在宅継続診断をハードソフトの両面で行うことができるようになればと考えています。在宅継続診断モデルも視野にいれた研究を進めたいと考えています。
園田:本日とても新鮮だったことの1つは、4km圏や10km圏での狭い圏域でのビジネスモデルと、地域で同じようなことをしている団体と手を携えるような横展開のビジネスモデルができているということです。20世紀後半のハウスメーカーのビジネスモデルから見ると、とても画期的な方向転換だと思います。2つ目は長寿社会住宅設計指針から始まる高齢者居住のガイドラインの伝え方が足りていなかったが、上手に伝える人を育てると、キャッチする側の人の土台もできているので、啓発や発信が進むことが分かったということです。3つ目は、シニアが自ら動いて役割を持ちたがっているということで、シニアと肩を組んで一緒に取り組むことに新しい可能性があるということです。ありがとうございました。