パネルディスカッション2018
成熟社会の住宅市場とハウスメーカーの取り組み

民間企業と地域包括ケアシステムとの関係
〜地域ケア拠点の形成、自宅のバリアフリーリフォームの取組を通じて〜
積水化学工業 (株) 住宅カンパニー高齢者事業グループ 岸英恵氏 スライド

(1) セキスイオアシス (株) の創業とその後の展開

① セキスイオアシスセンター

 私共ハウスメーカーが介護事業を創業した理由をよく聞かれるのですが、プレハブ住宅が60年から100年以上長持ちする一方で、その住まい手が40年経過すると高齢者になり、介護が必要になった場合にも住み慣れた自宅に住み続けることを支援したいということで、介護の中でも在宅介護サービスにフォーカスしたことが一番の理由です。2004年に名古屋のセキスイハイムの新規事業として「在宅介護サービス事業所オアシスセンター」を開設しました。開設後14年経過し、事業内容は変化しているのですが、今の事業内容は1) デイサービス、2) 小規模多機能居宅介護、3) 居宅介護支援、4) 福祉用具貸与・販売の4つです。小規模多機能は介護度が増してくると泊りのニーズが高くなることから、オアシスセンター開設後に始めたものです。デイサービスは①一般型、②予防型、③自立型の3パターンに分かれています。自立型デイでは介護保険からの利用料はいただかず、自費での利用になります。
 事業を複数に分けたことで、自立期から要介護5までとお客様の層が広まりました。さらにオアシスセンターのサービスを通じて高齢期には健康維持・介護予防・介護対応の3つライフステージがあることがわかり、ライフステージごとに必要な住まいとサービスについて現場で体得することができました。在宅介護サービスにこだわって様々なお客様とお話する中で分かったことは、自宅の住環境の悪さです。まだ元気なんだけど、この状態を維持するためには自宅に問題があるというケースを多々見てきました。

② サービス付き高齢者向け住宅「ハイムガーデン熱田」

 住環境のまずさから状態が悪化することを防ぐための住まいの提供を次の事業にしたいということで、「ハイムガーデン熱田」というサ高住をスタートしました。ここの特徴は要介護ではないけれどちょっとした不安や、ちょっとしたバリアで要介護になるおそれのある高齢者がメインの入居者ということです。なるべく面展開したいということで、オアシスセンターから車で10分くらいの近場の土地に開業しました。介護型のサ高住は近隣にたくさんある中で、早めの住み替えという位置づけのサ高住はあまり認知されていないので苦戦されることが予想されたのですが、今は満室になっており、待機者もおられます。高齢者が最後まで健康でいるためには会話・食事・運動・睡眠の4つの要素が必要ということで、「話食動眠」を取り入れた運営を進めています。

③ オアシス在宅療養支援センター

 さらに3拠点目となる新しい事業として「オアシス在宅療養支援センター」を始めました。こちらでは病院から在宅復帰されたターミナルのお客様など、医療依存度の高い方を対象としており、ナースを中心とする医療職がサービスを提供しています。近隣に名城大病院とクリニックが多数あり、そちらとの連携を増やして最後まで自宅で暮らしたいという誰もが願うことを叶える事業を行っています。

(2) セキスイオアシスの三位一体体制

 オアシスセンターを通じて私たちが体得したことは、高齢期の3つのライフステージの中で介護予防期の維持が最も難しいということです。ちょっとした不安のフォローや日常の転倒を防ぐことで介護予防期は維持できますが、ここが損なわれるとすぐに介護対応期にスライドします。セキスイオアシスでは介護予防期のお客様を主な対象に事業を行っています。セキスイオアシスは名古屋にしか拠点がないのですが、事業拡大には首都圏での展開が必要ということで、セキスイハイムグループでは2社の高齢者事業を買収しました。現在のセキスイハイムグループでは3社が3つのライフステージにわたって暮らしと住まいを支えています。サ高住にしてもグループホームにして有料老人ホームにしても、その地域においては一部分の高齢者にしか安全な住まいとサービスを提供できません。大多数を占める持ち家にお住いの方への介護サービス事業を行なうことの重要性を再認識しました。