郊外住宅地における空き家問題の現在

(2)郊外住宅団地で空き家によるどのような問題が発生しているか

空き家問題と一口にいっても、立地する市街地の性格により、問題発生のメカニズムは異なります。
表1は、密集市街地と郊外住宅団地の空き家問題のメカニズムの違いをおおまかに区別したものです。
表2は、横浜市郊外住宅団地(5地区)での管理不全空き家について実施した調査結果をまとめたものです。この調査を通じて、所有者がその地域との関連が薄くなると、管理不全に陥りやすいということが分かりました。建設後30以上経った郊外住宅団地では、親が長期入院や亡くなった後、子ども世帯や家族が遠い地域で暮らしているケースが多く、そうした空き家が管理不全になりやすいということが分かりました。

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【調査対象】  横浜市の郊外戸建住宅団地5地区  5地区ともに、地区計画もしくは建築協定が定められている
【調査期間】  平成24年10月〜平成25年1月
【調査方法】  各地区のまちづくり担い手(自治会、民生委員、建築協定運営委員会など)との協働による現地調査と、所有者などへの [1] 空き家の理由、[2] 空き家の期間、[3] 管理状況、[4] 今後の意向 などをヒアリング調査。
空き家管理に取り組んでいる不動産事業者と協働の、現地踏査により、劣化状況を診断。各空き家の建築後年数は概ね30〜40年(旧耐震)。

管理不全空き家例

photo6 築後約40年/空き家期間約3年。高齢女性一人暮らし→都心マンションに住み替え。
住み替え当初は月2回風入れなどに来ていたが、現在は主に隣家に家守をお願いしています。
雨樋にたわみが生じており、雨水が壁・天井などにしみこむ原因になります。

 

 

photo7築後約40年/空き家期間10年以上。高齢男性一人暮らし→死亡。子ども世帯は離れたところに居住。
中学生が中に入るトラブルが起きました。
壁・屋根にひび割れなどが生じており、雨水がしみこむ原因になります。

 

photo8空き家約2年。所有者は他地域に住んでいます。
一時期借家として貸し出していたが、現在は空き家です。屋根とベランダが傷み始めています。

 

photo9築後約30年/空き家期間約3年。父親一人暮らし(10年近く)→死亡。子どもは別のところに暮らしています。
1人暮らしの10年近く、家の管理をしていなかったために、リフォームしようとしたが、手がつけられなくなっていました。屋根や壁が落ちないように家にネットを被せています。

 

photo10築後約40年/空き家期間10年以上。死亡(子ども世帯は離れたところ)。
ほとんど放置されていました。台風で屋根材が隣家に落ちるトラブルが起きました。