講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4.近隣センターの現状
太田:  近隣センターの店舗はそれぞれ個人所有で、もともと2階は住居として使われていましたが、所有者が高齢化して店を閉め、他の場所に住むようになってきました。多くの場合、空き店舗にしたままなので近隣センターは閑散としています。もちろん近隣センターを再生する取り組みも一部にはあって、新千里南町や高野台では高齢者支援施設へ、新千里東町、新千里西町、佐竹台ではコミュニティカフェへとリノベーションされた店舗併用住宅もあります。



例えば、佐竹台近隣センターにあるコミュニティカフェ兼本屋の「さたけん家」ですが、これは2011年にオープンしたもので、阪大の研究室と地域住民の協働で発足した「佐竹台スマイルプロジェクト」から生まれました。もともと、おばあさんが一人でやっていた本屋をリノベーションして、2階の元住居の部分を交流スペースとして開放しています。このような、市民が運営する常設のコミュニティカフェは千里ニュータウンに5つほどあります。
松村:  コンビニはどうですか。あってもよさそうなものですよね。
太田:  コンビニの出店は遅れています。というのも近隣センターの店舗の多くは山林などを失った地権者に優先的に分譲したという経緯があり、雇用対策でもあったため、業種の競合を避けるという規則があります。コンビニは様々な業種と競合するので出店が難しい。例えばある地区センターにコンビニができましたが、近くに仏壇屋さんがあったためこのコンビニではロウソクや線香を売ってはいけないことになっています。
佐藤:  近隣住区理論に基づく施設配置そのものの問題もあったりするのでしょうか。
太田:  街路の作り方で問題なのは、賑わいがないことですね。千里の近隣住区は各住区の中心の近隣センターに人が集まるように考えられているので、住区間の連携という考えが希薄で、住区と住区が幹線道路で隔てられています。しかも幹線道路に沿って住区用の側道を設けているところもあり、そこでは3本の道路で住区間が区切られているわけです。一方、開発後期には歩行者専用道路が住区を貫くように設けられましたが、夜になると人気もなく、女性や子供は一人では歩けないような状況です。樹木も大きく育っているため見通しも悪く、昼間でも薄暗い道になっている場所もあります。公園も同様の状態で、例えば新千里東町では「近隣公園では遊ばないように」と親が子供に注意するくらいです。少子化が進んだこともあって幼児公園も利用度は非常に低いですね。



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