「郊外住生活の現状と問題点」
−郊外住宅団地住まい手の経年による
“からだ・心・交流”の変化と住まいのあり方−
(3) ハウスメーカーに望むこと
① メンテナンスによる価値の維持・証明
あるハウスメーカーでは、外壁塗装は不要で半永久的に使えるというようなPRをされていますが、実際には40年ぐらい経つとかなり高額の補修費が必要になったということも聞きましたし、家そのものについての正しい認識がユーザーである我々は持っていなかったと思います。高齢者の集いの場所などでそういうお話を聞くことが多いです。お金のなくなった頃に大きいメンテナンスが来るというのが一番骨身にこたえるという高齢者が多いようです。買う人も認識不足ですが、ハウスメーカーから十分な説明がなかったといった恨みがましい声があるということをご報告したいと思います。「スムストック」のような、メンテナンスしたらそれだけ価値が上がるということを証明しようという動きがございますが、そういったメンテナンスの正しい評価をきちんとやっていただきたいと思います。
② フェールセーフ設計
フェールセーフ設計をしていただきたいと思います。例えばコンセントを掃除していないと埃が溜まって火災の原因になるということを言われていますけれども、家電品のメーカーの説明書では、機器は使い終わったらコードをコンセントから抜いて下さいと書いてありました。しかし、消費者は隅にセットされた機器をコンセントからいちいち抜く人はいないと思います。それは過大な要求で、説明書にそう書いてあるから万一火災になっても免責されるというのはおかしいと思います。また、赤ちゃんがクリップを差し込んで感電をするということもあるので、コンセントは高いところにつけてほしい。高いところにつけると埃もかからないし、常に目視できるから安全ではないか。ただし不便になりますが。このような研究をこれからもやってほしいと思います。
それからフェールプルーフ、つまり壊れる時には安全に壊れるようなものが求められると思います。私は現役の時は家電製品を作る会社にいまして、家電製品の研究開発をやっていました。家電製品の研究開発で非常に難しいのは、消費者が色々な使い方をしますが、例えば洗濯機の場合は一番安全な壊れ方は表面を錆びさせることです。そうするとお客さんも古くなったと諦める。表面を綺麗にして、いつまでも使えるようにすると、いつかモーターの部分がやられた時に火災などの危険が起きます。一番安全でビジュアルのところは、早く壊れるのがやっぱり良いのではということを議論したことがございます。
③ チャイルドプルーフ設計
これは今特に重要になってきています。今は使い慣れたものを使っている方が、不幸にも認知症になるとあたかも子供のように変わっていくわけです。例えば高齢者の方が、やかんでお湯を沸かして電話がかかってくるとそれに夢中になっていつのまにかやかんが空焚きになって、というようなことが起こっています。そのためガス方式をやめて安全性の高いIHなどの電気に変えるということが行われます、私の場合設備費はリフォームも含めだいたい100万円ぐらいかかりました。65歳以上の方の30%ぐらいの方が認知症になると言われているこの時代では、設備をぜひチャイルドプルーフ設計に変えればいつまでも安全に使えて、合理的だということをハウスメーカーさんの知恵で是非売り込んでほしいと思います。
④ 定期的メンテナンス設計
住宅の中で寿命の短い部分は簡単にメンテナンスできるようにしていただきたいと思います。例えば100年住宅といっても100年間下水がつまらないわけはないので、そのぶんは大きな金をかけずに簡単にメンテナンスを行えるような設計をお願いしたいと思います。外装の塗装は消費者の考える以上に金額が高く、金額が高いゆえに業者も多い。だから外装の塗装について色々な業者から売り込みが来ます。これはそこの流通の仕組みに何か不自然さがあり、十分な効率化、いわゆる標準化が進んでいないということだと思います。
現在のガス器具では立ち消え安全装置と過熱防止装置が全部付いていますが、古いお家では過熱防止装置は一部分しか備えられていません。ところが町に行ってガスコンロを調べると両方の安全装置が全部付いていないと売ってはいけないと決まっています。現在使っているものが全部ダメとなったらとても対応できないから、使用中のものはそのままでとなっている。使っている人が認知症になると大変危険な状態です。こういったことを住宅検査機関のようなところがチェックできれば中古住宅の流通の市場も育つのではないかという気がします。リフォームについては、家の老朽化もさることながら、設備も相当工夫して、もっと安全で簡単にという方向にする必要があると思います。
⑤ 戸建て住宅団地のまちなみ
最近の住宅団地では固定したゴミ置き場を設置して分譲されていますが、固定したゴミ置き場のない住宅団地では、ゴミ置き場がいつも持ち回りになって大変もめています。
それから団地開発時に決められた自治会の班構成はブロック毎になっていますが、家が背中合わせの班となり、コミュニケーションがとりにくい問題があるため、道沿いの玄関が向き合った形の班構成が良いです。背中合わせの家では、北側の家の人にとっては南側の庭はくつろぎの場所で非常に大事な所ですが、その向こう側の南側に建っている家にとっては裏口で、汚いものが並び、植木の手入れも十分にやっていないということで、仲が悪くなりやすい。実際に地区計画などを決める時は、必ずそういった境界から1m以上離す、雨樋の水滴が向かい側にあたらないようにといった色々な細かいことを決めます。それでもなかなかコミュニケーションがうまくいかない。そういう背中合わせの組み合わせを何とかしようという取り組みがちらほら出てきています。越谷の方でははじめから玄関を見合わせるようにした建売住宅も出てきております。
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