北欧流『ふつう』暮らしから読み解く環境デザイン

• 1990年代以降、ストックホルム市住宅供給公社のファミリーェ・ボスターデル社が、公的賃貸住宅としてコレクティブハウスの供給を開始しました。コレクティブハウスは、シニア型と多世代型に分かれます。シニア型コレクティブハウスは、「人生の後半生のための住まい」と呼ばれ、40歳以上の子どものいない世帯のためのコ・ハウジングです。多世代型コレクティブハウスは、多様な世帯・年代が居住する住まいです。スウェーデンは離婚率が高く、単親世帯の入居が多い傾向です。
• シニア型コレクティブハウスである「フェールドクネッペン」は総住戸数43戸です。住戸タイプは１K19戸、２K12戸、３K12戸で、私が調査した時点で52歳から91歳の入居者が51名暮らしており、男性は11名、女性は40名、平均年齢は70歳です。
• 多世代型コレクティブハウスである「トレ・ポーター」は総住戸数52戸です。住戸タイプは2K (58m²) 23戸、3K (74m²) 18戸、4K (87m²) 8戸、5K (97m²) 3戸で、居住者年齢は0〜14歳40名、14〜20歳20名、20〜30歳10名、40〜65歳以上10名です。
• コレクティブハウスに暮らすことの効能は、より頻繁な社会との接触や連帯感・共生感が得られること　経済的負担や家事労働に対する負担が軽減されること　住民の子世帯・孫の訪問により他世代との交流が頻繁に実現することがあげられます。コモンミールでは、ゲストも一緒に食事を楽しむことができます。
• 一昨年くらいから、高齢者住宅である安心住宅と、シニア型コレクティブハウスにおける、終末期の看取り対応があったかを調査しました。安心住宅は元気なときに暮らすところで、終末期対応が必要になった方については、サービスハウスなどに住み替えると回答される方がほとんどでした。一方でシニア型コレクティブハウスでは、入居者の中の誰かが看取りの必要になったときは、対応する準備があるとのことで、看取りの実績のあるところもありました。住宅の建て方よりも、自主運営が居住の持続可能性の秘訣と感じました。

表1：安心住宅とシニア型コレクティブハウスにおける終末期対応

	安心住宅			シニア型コレクティブハウス
	A	B	C	D	E	F	G
居住者年齢	75歳以上(現在65歳以上)			40歳以上
場所	Norrmalm	Starkholem	Bromma	Sodermalm	Sodermalm	Skarpnack	Hagersten
設置年度	2011	2014	2015	1993	2008	1999	2010
住戸数	56	154	106	43	46	44	61
居住室面積	49-106	51-57	44-88	37-75	40-70	31-70	35-72
新築 ▽ 既存活用	集合住宅	サービス ハウス	サービス ハウス	新築	新築	集合住宅	新築
受入可能性	△	×	×	0	0	0	0
受入経験	×	×	×	0	0	0	×

表２：ストックホルム市の高齢者住宅

	シニア住宅	安心住宅	サービスハウス	看護介護住宅
	Seniorboenden	Trygghetsboendes	Servicehus	Värd-och omstrogsboenden
ニーズ判定の可否	ニーズ判定は必要無し	ニーズ判定は必要無し	ニーズ判定を要する	ニーズ判定を要する
住宅の特徴	・年齢制限は住宅により異なる	・75歳以上高齢者	・65歳以上高齢者	・65歳以上高齢者
	・住戸への居住	・住戸への居住	・緊急通報装置付き住戸	・緊急通報装置付き住戸及び個室
	・高齢者サービスへのアクセス可能	・決められた時間に職員常駐	・在宅ケアの利用が困難な場合看護ケアへのアクセス可能	・包括的なケアサービスが必要な場合、24時間のケアサービスが可能
	・一般賃貸、共同賃貸、組合所有	・余暇活動や食事のための共用空間の設置	・余暇活動や食事のための共用空間の設置
申請の方法	・ニーズ判定は不要	・ニーズ判定は不要	・ニーズ判定を要する	・ニーズ判定を要する
	・ストックホルム市住宅供給サービス会社、民間住宅会社、その他住宅供給組織によって供給される、シニア住宅としての認定を受けたものが提供される	・ストックホルム市住宅供給サービスによって提供される	・必要に応じて入居可能	・必要に応じて入居可能
	・医療的対応、社会的対応が強く求められる人を優先する	・70歳時より待機者リストに登録できる	・入居する住宅を選択することはできない	・入居場所の選択可能
サービス追加の可否	・ホームケアサービスの利用や緊急通報装置の設置などは可能	・ホームケアサービスの利用や緊急通報装置の設置などは可能	・緊急通報装置設置済み	・すべてのサービスが用意されている。
			・各自に必要なホームケアサービスの追加は可能