トップページ 「まちと住まい」の実践事例 題材:「家って何?」



 この実践は、平成15年2月に琉球大学附属小学校5年生で行ったものです。
 家庭科の「住まい方」に、社会科や総合的な学習がかかわることになった。そこで、風通しのいい住まい方を知識として伝え終わるのではなく、他教科とかかわらせながら感性と思考と意欲に添う授業をしくむことにした。重要文化財沖縄中村家住宅という素材を扱い、「家」に必要なものは「人」であり、「人」は「メンテナンス」することで、安心感を得る「家」と生活していることに気付かせていく。
 総合的な学習における構想は、図1のように、子ども達の吟味から始まり、互いの考えを認め合う為、全員が参加する各グループ企画で深め、後半には全員で協同的に「ひとつのこと」をするという子どもに添う型で進めている。
 今回、後半の学級総合は、新聞記事に掲載されたNGOに目が向き、海外の子どもの生活に関心を高めつつあった。中でもマンホールの家に住む子ども達が気になったようである。「どうしてそんな家に住んでいるの?」という純粋な疑問を受け止め、「人」「こころ」に触れる学習内容を含めた授業として、家庭科の「住まい方」の内容で、海外の家に触れることにした。
 子どもの関心に添う海外の家はカナダの家である。空気の流れをつくる工夫の面で、沖縄の古い建物である「中村家住宅」と比較する。「換気・空気の流れを作る」という方法は違うにせよ、どちらも「換気・空気の流れ」や「掃除」の必要性を気付かせる。その家で生活している方の話を聞くと、家に「安らぎの場」を求め、家を大事にしていることがわかる。さて、マンホールの家には「換気・空気の流れ」「安らぎ」は存在するだろうか。そして、自分達の生活する場所には「換気・空気の流れ」や「安らぎ」が存在するだろうか。

 




沖縄・需要文化財
中村家住宅

図1 <総合的な学習の時間の流れと家庭科のかかわり>  

 今回、「気付き」「発見」へのしかけとして、重要文化財沖縄中村家住宅の見学とアンケート分析を行う。対象とのかかわりから生まれてくる生活上の課題や発見は、体験だけでなく子ども達のアンケートを分析することからも捉えられると予測している。自分達のもつそれぞれの意識について分類し、その内容について感じたことを話し合うことは、「自分達の発見」「多様なそれぞれの考えの発見」になるのではなかろうか。子ども達は、教師の「アンケートから何が分かる?」という発問を受け、自分達は何をすればよいか考え、少数意見のよさにも目を向けていく。このような分析と話し合いは、創り出すことや多様な生活環境の工夫へ繋がるきっかけになるのではないかと考えている。
 話し合いの場面で、教師は一緒に考え合う。子ども達は「風向・室温・断熱・換気・空気の流れ排水・保存・ごみ」等の家庭科の知識を得るだけではなく、「昔のひとの生活の知恵は使える」「家は人がいないと壊れる」という生きていくための身近な家庭生活に必要な学びを認め合う。そのてだてとして「ゲストティーチャーの考え」等を使う。そして、カナダの家がいいのか沖縄の家がいいのかマンホールの家がいいのかと決定付ける前に、「よさ」「気になる部分(不安な部分)」を挙げ、多方向からの視点を持って話し合うことで、互いの考えを認め合っていく。つかんだ改善策は、「どれが一番良い。」とひとつに絞られるものではなく、実践に繋がる選択の前提材料となり、生活実践への意欲の高まりに繋がるであろうと考えている。


図2 <グループのメンバーを入れ替え、全員が伝え合い考え合う>