尾道 建物と敷地の関係からまちなみを考える

尾道

  尾道は広島県東部に位置する港町である. 中心市街地は,北側にある斜面地と南側にある瀬戸内海(尾道水道)に挟まれた平地に東西に広がる. 日本の大動脈である山陽本線と国道2号線が斜面地と平地の境界を東西に通る. 陸の大動脈の海側に中心市街地があり,斜面地には由緒ある寺社地と住宅地がある.


写真0:斜面地から尾道の中心市街地と尾道水道を望む


  このように,尾道は明快な都市構造を有する. なかでも,尾道の魅力を高めているのは,斜面地のまちなみであろう. 本稿では,斜面地のまちなみについて「建物と敷地の関係」に着目して考えてみたい.

建物と敷地

  建物と敷地は互いに切っても切れぬ関係にある.建物は敷地の上に建てられる. 一方で,ある土地に建物が存在してはじめて,その土地は敷地とよばれる.
  敷地は,幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない. これは,「接道義務規定」といい,敷地とその上にある建物の安全性や快適性を確保するために重要な規定である(1. 敷地の面積や形状そして接道状況をはじめとする敷地の条件は,建物デザインの自由度を制約する. この制約が個々の建物に個性を与え,建物群としてのまちなみに個性を与える.
  このように,敷地の条件はまちなみを形成する上で重要である. ところが,建物は目に見えるのに対して,敷地の境界は目に見えない. どのような敷地の条件がどのようなまちなみを形成するのか.興味深い問題である.

建物と敷地の関係からまちなみを考える

  先述したように,尾道の斜面地には寺社地が多い. そして,斜面地にある住宅は寺院や墓地に囲まれて立地する.

写真1:寺院や墓地に囲まれて立地する建物




写真2:道路でなく「通路」に面する建物




写真3:古寺めぐりの「順路」を示す石標




写真4:路地の分岐 右と左,どちらに進みますか?




写真5:甍を見下ろすまちなみ




写真6:路地のまちなみ




参考文献
1. 柳沢厚・山島哲夫(編)(2005),「まちづくりのための建築基準法 集団規定の運用と解釈」,学芸出版社.

(文責:薄井宏行)