千葉県匝瑳市飯塚・開畑地域の様子(写真1)
◆飯塚・開畑地域の状況
飯塚地区は匝瑳市内の豊和地区を構成する1集落である。豊和地区では、「後継者不足や高齢化による農業従事者の減少と、それに伴う耕作放棄地の増加が懸念」されている(千葉県匝瑳市「実質化された人・農地プラン(豊和地区)」)。
その中でも西部の農用地区域が設定されている地域で複数の事業者によって、ソーラーシェアリングが実施されている。千葉県はソーラーシェアリングの導入が全国で最も多い都道府県だが、飯塚・開畑地域のように複数の事業が集積していることは珍しい。飯塚・開畑地域ではどのような経緯でソーラーシェアリングが導入されたのだろうか。
◆現地視察
飯塚・開畑地域でソーラーシェアリングを実施する市民エネルギーちば株式会社へのヒアリングと現地視察により、飯塚・開畑地域でのソーラーシェアリングが急速に集積した理由は3つに大別できる。
・ 耕作放棄地の活用
もともと飯塚・開畑地域は国の政策によって山を削って谷を埋め立てた農地(80万m2)であり、粘土質で痩せた土地である。そのため、大豆・麦ぐらいしか育たず、耕作放棄地になっていたが、農用地区域なので宅地や雑種地にもできない状況であった。そのため、ソーラーシェアリングで活用されることは、地域住民から受け入れられやすいと考えられる。
・ 段階的な導入
市民エネルギーちばのソーラーシェアリングの1号機は一般市民からパネルオーナーを募って資金を得て事業を実施した。徐々に、金融機関から融資を受けたり、企業と連携することでソーラーシェアリングの件数を着々と増やしてきた。一斉に大規模にソーラーシェアリングで開発されたわけではなく、徐々に進むことによって地域の理解が得られやすかったものと考えられる。
太陽光パネルの下で栽培されている大豆(写真2)
・ 地域貢献
飯塚・開畑地域のソーラーシェアリングは、そのコストや利益が地域に還元されているのも特徴である。ソーラーシェアリングの下部で化学肥料や農薬を使わない有機農業に利用されている土地の面積は13万m2(うち1.5万m2は不耕起栽培)であり、全て地元の農業生産法人に委託しているとのことだった。作物の出来不出来にかかわらず、年間委託料は500万円(2022年12月時点)の安定収入が見込めるため農業を続けやすい仕組み作りがされている。
地域貢献策として豊和村つくり協議会に年間410万円を寄付(2022年12月時点)しており、協議会は子供への体験学習、環境学習、移住者支援などを担っている。地域で年に1回開催されるソーラーシェアリング収穫祭にも協力・支援している。
また災害時にもソーラーシェアリングは利用され、非常時に電源が無料開放された。2019年の台風15号により、近隣地域は1週間から10日間停電したが、ソーラーシェアリングの設備には被害がなかったので、災害時無料充電所として開放し近隣住民に利用された実績があった。