留萌本線の部分廃線を機に考える留萌の今とこれから

◆はじめに

北海道留萌市は日本海に面する人口2.2万人ほどの自治体である。古くはニシン漁と石炭採掘で栄えた留萌だが、前者は乱獲に伴う漁獲量減少、後者はエネルギー源の転換の影響で産業が衰退し、どちらも昭和中期に終わりを迎えた。
留萌にはかつて3本の鉄道路線(国鉄留萌本線・羽幌線、天塩炭砿鉄道)が通っていたが、2023年2月現在はJR留萌本線を残すのみとなっている。その留萌本線も並走する深川留萌自動車道が2020年に全線開通したことで利用者が減少したため、2023年3月をもって留萌駅-石狩沼田駅間の廃止が決定しており、留萌から鉄道が無くなることとなる。
ここまで産業の衰退と鉄道の消失について紹介したが、留萌に対してどのようなイメージを抱いただろうか。高齢化と人口減少に喘ぎ、中心市街地も閑散とした「終わった街」のようなイメージを持つ方もいるのではなかろうか。本稿ではそんな留萌の今とこれからについて考える。

◆留萌の今


図1:留萌市中心部の地図(地理院地図を基に筆者作成)

留萌の今について、図1に示した3つのエリアに分けて紹介する。

1. 留萌駅前
現在も営業している飲食店が立ち並ぶ通り(写真1)も見られたが、ところどころ点在する空閑地(写真2)や老朽化した飲食店の建物(写真3、現在は営業していないと思われる)なども目立った。筆者が訪れた日(2022年10月10日。留萌で初雪が降る7日前。)の天候があまり良くなかったこともあってか、人通りはほとんど見られず、寂しい印象を受けた。

写真1 現在も営業している飲食店が立ち並ぶ通り


写真2 空閑地


写真3 老朽化した飲食店の建物(店名がわからないよう加工済)

2. 国道231号線沿い市街地
空家も見られたが、様々な種類の個人経営の商店が今も営業している様子(写真4)が見られた。市内を含め、留萌市近辺にはイオンモールのような大型商業施設が存在せず、最寄りの大型商業施設は40km以上離れた滝川市や旭川市に立地する。個人経営の商店が軒を連ねるまちなみが今もなお残っているのは、そうした状況が一因であると考えられる。筆者が訪れた際は、人通りは少なかったものの、車通りはある程度あった。

写真4 個人経営の商店が立ち並ぶ通り

3. 道の駅周辺
2020年に開業した「道の駅るもい」(写真5)には、アンテナショップや子供の遊べる屋内遊戯広場、ドッグランなどが設置されている。道の駅が面する国道231号線は接続する国道232号線と合わせて日本海オロロンラインという愛称を持ち、海岸線の絶景を楽しめるドライブルートとして知られている。道の駅には日本海オロロンラインが通る周辺市町村と合わせた観光マップ(写真6)が掲示されており、道の駅が観光拠点としての役割を持つことがわかる。筆者が訪れた際も観光バスで訪れた多数の観光客でにぎわっていた。
更に留萌市は株式会社モンベルと包括連携協定を結び、アウトドアを核とした観光推進の拠点施設として「モンベルアウトドアヴィレッジるもい(仮称)」の整備が道の駅敷地内で行われることが計画されている。株式会社モンベルは日本屈指のアウトドアメーカーであり、2012年に旭川市近郊の東川町も誘致に成功し、カフェ巡りや街歩きを楽しむ若年層の観光客及び移住者の増加に繋がっている。故に道の駅るもいも、今後一層観光拠点としての役割を強めていくことが考えられる。

写真5 道の駅るもいの外観


写真6 道の駅るもいに掲示されていた観光マップ


◆留萌のこれから

最新の留萌市の都市計画マスタープランは、留萌本線の部分廃線が決定するはるか前、2003年に策定されたものである。マスタープランの中では留萌駅周辺地区を「にぎわい誘導の核」とする旨が記載されており、鉄道駅を中心としたにぎわい創出を目指していたことが窺える。一方、前節で紹介したように、現在の留萌駅前は空地空家の目立つ少し寂しい様相を呈しており、街のにぎわいはむしろ国道231号線沿いの市街地や道の駅で生まれていると思われる。留萌本線の部分廃線の一因が並走する自動車道の開通であることを考えれば、自動車利用者にとって利便性の高い国道沿いに街のにぎわいが生まれるのは当然のことであり、今後もこの状況が続いていくと考えられる。
一方、前節で述べた通り、国道231号線沿いの市街地では、車通りはある程度あったものの人通りはあまり見られず、市民がにぎわいを形成する場所とはなっていなかった。故に観光拠点としての道の駅のにぎわいを市街地にも波及させていく、もしくは道の駅が観光客のにぎわい創出と市民のにぎわい創出の2つの役割を併せ持つようにする、というように、市民が自動車移動を主としながらにぎわいを形成できる場があることが望ましいと考えられる。そうした場があれば、留萌は市民にとっても観光客にとっても、「終わった街」とは程遠い、魅力ある街になるのではなかろうか。

◆参考文献(全て2023/02/16閲覧)

[1]留萌市:JR留萌本線の廃線についてhttps://www.e-rumoi.jp/content/000066221.pdf
[2]国土地理院:地理院地図 https://maps.gsi.go.jp/
[3]道の駅るもい https://www.michinoeki-rumoi.info/facilities/chilmo-fac
[4]留萌市:留萌市都市計画マスタープラン https://www.e-rumoi.jp/kenchiku/ken_00043.html
[5]留萌市:モンベルアウトドアヴィレッジるもい構想(素案)について https://www.e-rumoi.jp/seisaku/page15_00333.html
[6]東川町:優しいまちづくり https://higashikawa-town.jp/storage/files/files/panel/011/town-history-vol3-1-4.pdf

(文責・写真:福島渓太)