小樽運河沿いに北へ1.5kmほど歩くと,小樽市総合博物館がある.この博物館は旧手宮駅の跡地に作られたものである.手宮 - 札幌間は,北海道最初の鉄道「官営幌内鉄道」(後の手宮線・函館本線)が開通した場所であり,これは日本国内の鉄道でも新橋-横浜,京都-大阪に次ぎ3番目に早く作られた鉄道である.当時の北海道の開発にかける期待の大きさがわかり,石炭や海産物の積み出しで賑わったことが偲ばれる.
現在は廃線跡のほとんどが保存されており,踏切や踏切での一時停止の不要を知らせる看板もある.廃線跡のうち,約1.6 km が線路や遮断機などの遺構を残しながら歩きやすく散策路として整備されている.小樽運河を北上して歩いた後,廃線跡に移動して歩いて総合博物館に行くのがオススメのルートである.
◆明治・大正・昭和の名残その3:「北のウォール街」
かつて小樽が明治・大正の近代化による繁栄に沸いたことは,金融業の集積からもわかる.1876年に旧第四十四銀行が小樽支店を構えて以降,大正・昭和初期まで多くの銀行が小樽に造られ,「北のウォール街」と呼ばれるまでに繁栄した.旧北海道銀行本店,旧北海道拓殖銀行小樽支店,日本銀行旧小樽支店,旧三井銀行小樽支店,旧安田銀行小樽支店,と名だたる銀行の本店や支店の名前がずらりと並ぶ.私はもともと小樽に対しては小樽運河のイメージしかなかったため,かつての繁栄ぶりにとても驚かされた.それらの建築が取り壊されることなく残っているのも小樽の特徴であり,今では土産物店やカフェなどに利用されている.
おわりに
まちを代表する小樽運河をきっかけとして,鉄道,銀行,埋め立ての地形,石造りの倉庫,等から明治・大正・昭和初期の繁栄を垣間見ることのできるのが小樽というまちの魅力である.小樽が市町村魅力度ランキングで上位にくる理由の一端はこんな所にあるのかもしれない.
◆参考文献
・岡本哲志, 日本の港町研究会(2008)『港町の近代―門司・小樽・横浜・函館を読む』学芸出版社
・田村喜子(2009)『小樽運河ものがたり』鹿島出版会
・小樽散策 〜小樽運河歴史の散策路〜 http://www.saboten.sakura.ne.jp/~suzu/ota_unga.htm
(2017年11月17日閲覧)
・ブランド総合研究所 (BRI)地域ブランド調査2017 http://tiiki.jp/news/05_research/survey2017 (2017年11月17日閲覧)
・小樽市 :小樽市のあゆみ https://www.city.otaru.lg.jp/sisei_tokei/otaru/profile/ayumi.html
(2017年11月17日閲覧)
(文責:M田貴之)