市街地の緑地再生

 今までの都市計画の枠組みは、都市拡大圧力をいかにコントロールするかが最大の関心事であった。そして、実際、都市は権利関係が相対的に単純で、地価の安い郊外において、スプロール開発、計画的にはニュータウンや土地区画整理事業などで市街地が拡大していった。近年の開発では、既成市街地の高密度化も進むようになってきた。市街地における高密度開発では超高層建築が、また、既存の低層市街地は中高層市街地へと改変されてきている。

 その結果、緑地の減少が進んできている。郊外部では緑地が市街化され、崖線の緑なども開発の危機に瀕している。市街地内部では、個人敷地内の緑が細分化などによって減少してきている。

 今後は、人口が、次いで世帯数が減少することが予想されており、また、環境持続可能性が強調される中、緑地の持つ効用を見直して、長期的な土地利用計画を考えていく必要がある。それにより、市街地縮小に適合的な市街地における緑地の再配置を進めねばならない。

 緑地は、都市に暮らす人々の憩いとなり、ヒートアイランド現象など都市気候の緩和に効果があり、さらに、防災空地としての役割を期待できる。しかし、現実には、空地を持つ土地所有者は、経済性から緑地にするよりは建蔽地にすることを選択しがちである。また、せっかくの空地があっても、表土や植物の維持の手間を省くために、コンクリートやアスファルト舗装を選択する場合も多い。再開発でも緑地は魅力付けのアクセントに過ぎない使い方をしている例も多々ある。それでは、緑地の価値はあまりないのだろうか?実は、平均敷地規模が小さな戸建住宅地では、宅地にするより緑地として使う方が良く、街区全体で見たときの価値があがる傾向があることが定量的に示されている(浅見・高, 2002)。場合によっては、建蔽地とするよりも、緑地とする方が、周辺の宅地価値があがって、全体として資産価値が増加することがあるのである。



 そこで、どのような場合に緑地にコンバージョンすると価値があるのかを分析し、そのような場合には、社会制度として緑化を促進していくことが望ましい。すでに、緑化を条例で義務づけたり、生け垣などに補助金を出したりする自治体も見られるが。ただ、本来は緑化による市街地の価値増分を貢献者に還元する形での適正な促進策をとっていくべきだろう。



 緑は本来放っておいても生えるものである。空地は放っておけば1ヶ月で草が茂る。本来は手間がかからないものなのである。しかし、そのような緑は、人々が歓迎する緑とは限らず、結果として緑化にはかなりの手間・費用がかかることになってしまう。今後、市街地の緑化を進めるにあたっては、手間がかからない緑のあり方が探究されるべきである。とりわけ、落葉の処理方法、(鳥に食べさせるなど)虫への対処方法、風土にあった樹種などはより周知されていくべきと思われる。(文責:浅見泰司)



参考文献 浅見泰司・高暁路(2002)「都市計画と不動産市場:住宅価格を左右する住環境」西村清彦(編)『不動産市場の経済分析』日本経済新聞社, pp.129-150.