道の駅スペース・アップルよいちは余市駅から550mほど離れており、ニッカウヰスキー工場同様徒歩で容易にアクセスできる。この道の駅は生産者直売所と余市宇宙記念館からなり、前者ではリンゴやブドウ製品の購入、後者では余市町出身の宇宙飛行士毛利衛氏に関連する展示物の観覧が可能である。筆者が訪れた際は、自動車で立ち寄った多くの観光客でにぎわっていた。
写真3:スペース・アップルよいちの生産者直売所
◆余市のこれから
ここまで余市町中心部の様子について紹介した。住民の生活拠点は道道228号線沿いをはじめとする商業拠点であると考えられ、山線の廃線後も車中心の生活に大きな変化はないと考えられる。しかしながら高齢化社会の進行が見込まれる状況下においては、公共交通の充実も不可欠であり、余市町の総合計画では路線バスの維持・充実を基本目標として位置づけている[5]。観光の観点では、ニッカウヰスキー工場や道の駅といった観光施設は山線の廃線により、余市駅から徒歩でアクセス可能であるという長所を失うこととなる。もちろん山線の廃線後も自動車でのアクセスは可能である。しかしながらアルコールの試飲を伴うニッカウヰスキー工場への訪問は自動車の運転との相性が悪く、また道外からの観光客にとって冬季の降雪時の運転は困難を伴う。余市町の総合計画では近隣市町村との連携のもと、広域的な観光産業の振興が必要である旨が記載されている。故に余市町の観光資源を今後も活かすためには、観光客がバスなどの公共交通機関で小樽や札幌から余市にアクセスしやすい環境を維持・整備する必要があると考える。
まちなみ探訪第78回「留萌本線の部分廃線を機に考える留萌の今とこれから」では、住民のにぎわい創出と観光客のにぎわい創出の2つの役割を併せ持つ場の形成をもって、留萌を更に魅力ある街にすることができると提言した。一方前述の通り、現在の余市駅前は既に住民のにぎわいと観光客のにぎわいが重なり合う魅力的な都市空間となっている。この住民にとっても観光客にとっても魅力的な都市空間を今後も維持するためには、山線の廃線後もバスを中心とする公共交通を維持・整備してゆくことが不可欠だと考える。
◆参考サイト(全て2023/08/05閲覧)
[1]余市町:余市町のあゆみ(余市年表),
https://www.town.yoichi.hokkaido.jp/machi/syoukai/history.html
[2]余市町観光振興計画(計画期間:令和5~9年度),
https://www.town.yoichi.hokkaido.jp/kankou/kankou_oshirase/files/kanko-shinko-keikaku2023.pdf
[3]国土地理院:地理院地図,
https://maps.gsi.go.jp/
[4]余市町:余市町都市計画マスタープラン,
https://www.town.yoichi.hokkaido.jp/sangyou/machidukuri/toshikeikaku/master-plan.html
[5]余市町:第4次余市町総合計画,
https://www.town.yoichi.hokkaido.jp/chousei/plan/sougoukeikaku.html
(文責・写真:福島渓太)