写真6:整然と並べられたE スクータ(サウス・ブリスベン記念公園)
3. CBD とカンガルーポイントを結ぶグリーンブリッジ
カンガルーポイントは、建設⽤の⽯材が切り出された川沿いの崖や、オーストラリア最⻑の⽚持ち橋 「ストーリーブリッジ」で知られるブリスベンCBD 東側の地区です(写真7,8;いずれも⽂化遺産)。崖を下りた川沿いには緑に囲まれた歩⾏者・⾃転⾞道があり、サイクリストやジョギングを楽しむ⼈々にとって理想的な空間が形成されています。
現在、この地区とCBD を結ぶ新たな橋「グリーンブリッジ」が、2024 年の完成を⽬指して建設されています(図2, 写真9)。市の交通計画にも明記されたこのプロジェクトには、アクティブ・トランスポートおよび公共交通利⽤の促進、交通渋滞の緩和、そして雇⽤創出および⽣産性の向上が期待されています。具体的には、平⽇1 ⽇の徒歩・⾃転⾞による移動回数(トリップ数)を2021年の約5300 回から、2036年には6100回に増加させ、川を渡る⾃動⾞交通を年間83,950台減らすと予測されています。また、カンガルーポイント地区から徒歩20分圏内に約130,000の雇⽤を新たに⽣み出すともされています。グリーンブリッジは2032年五輪のレガシーとなることが期待されています。その頃には、このグリーンブリッジも市⺠⽣活に定着し、カンガルーポイント地区は今よりもさらに活気を帯びていることでしょう。
写真7:カンガルーポイントクリフ
写真8:ストーリーブリッジ
図2:グリーンブリッジの完成予想図(市HP より)
写真9:建設中のグリーンブリッジ(写真3 にも遠景)
4. 2032 年、その先に向けて
ブリスベンにおける歩⾏者・⾃転⾞道整備プロジェクトは、単に交通の便を向上させるだけでなく、都市の魅⼒を⾼める役割も果たしています。五輪の開催が近づくにつれ、ブリスベンを訪れる⼈がますます増えることでしょう。シドニー、メルボルンと同様に、⼈⼝の急激な増加も予想されています。シドニーではすでに住宅不⾜とそれに伴う住宅価格の⾼騰により、都⼼で働くエッセンシャルワーカーの⽣活が脅かされています。
カンガルーポイント地区にあるレイモンド公園の周辺には、公園に陸上競技場を建設することに反対するポスターが貼られていました(写真)。いまの市⺠の⽣活を守りつつ、どう新たな住⺠や観光客を招き⼊れるか、州や市はその舵取りを迫られています。
写真10:陸上競技場建設に反対するポスター(レイモンド公園周辺)
◆参考文献
1. Brisbane City Council (2018) Transport Plan for Brisbane ̶ Strategic Directions
2. Brisbane City Council (2022) Riding in Brisbane
3. Brisbane City Council (2019) Kangaroo Point Pedestrian Bridge Preliminary Business Case Key Findings
(文責・写真:樋野公宏)