まちなみと商業 その1 大学と飲食店分布の関係

はじめに

いきなりですが、みなさんはファーストフードはお好きですか?
今や私たちの食生活に欠かせない存在となったファーストフードですが、日本初出店はおよそ50年前の1970年、ドムドムハンバーガー第一号店が東京町田にオープンしました。それを皮切りに、東京銀座にマクドナルド、大阪箕面にミスタードーナツと増え続け、沢山の日本人を魅了していきました。特に勉強やサークル、アルバイトなどで忙しい大学生は、この手軽で安くて美味しいファーストフードを利用する頻度が多いのではないでしょうか。
 そこで今回はまちなみと商業の第一弾ということで、大学とファーストフード店にどのような関連があるのかについて探っていきたいと思います。

分析方法と分析の流れ

対象地と分析に使用するデータについて

今回は東京都の大学と飲食店を対象とします。
大学については都内に位置する国公立大学・私立大学のサブキャンパスや研究所も含めた学術機関全体を扱います。
飲食店については有名チェーン店(マクドナルド、モスバーガー、ケンタッキー、フレッシュネスバーガー、サブウェイ、バーガーキング、ウェンディーズ/ファーストキッチン、ロッテリア、TGIフライデーズ、シェイクシャック、ドムドムハンバーガー)を扱います。

分析

まず、ファーストフード店全体の分布について見ていきましょう。図1は東京都内にあるファーストフード店の分布をブランドごとに色分けをして可視化したものです。表1は都内にある飲食店チェーンの店舗数ランキングです。一番多いブランドはマクドナルドで337店舗、その後モスバーガー、ケンタッキーフライドチキンと続きます。


図1:ファストフードチェーンの立地分布(ブランド別)

表1:ファーストフードチェーンのブランド別店舗数

次に、「カーネル密度」とよばれる,物件の密度分布を可視化する手法を使って、ファーストフードチェーン店の分布を調べます。なお、カーネル密度推定のバンド幅/ラスタサイズはGISソフト(ArcGIS)のデフォルト値としました。


図2:ファーストフードチェーン店の密度分布

図3:マクドナルドの密度分布

図4:モスバーガーの密度分布

図5:ケンタッキーフライドチキンの密度分布

図6:フレッシュネスバーガーの密度分布

どうでしょうか。図2では分からなかったブランドそれぞれの立地特性が図3〜図6の密度分布で明らかになりました。
マクドナルド、モスバーガー、ケンタッキーフライドチキンは都心の店舗数は多いものの東京都全体に広く分布しているのに対し、フレッシュネスバーガーは都心部に集中する傾向があります。マクドナルド、モスバーガー、ケンタッキーフライドチキンは、郊外部ではドライブスルーを設置する等、地域特性に合わせた経営を行っているのに対し、フレッシュネスバーガーは都心部特にオフィス街への出店を推進していると推察されます。実際ハンバーガー一つの値段に着目すると、マクドナルドが110円、モスバーガーが220円、ケンタッキーフライドチキンが340円(ハンバーガーの取り扱いはないため代わりとしてツイスターを比較対象にあげました)、フレッシュネスバーガーが420円と、大きさや材料にやや差はあるものの、ブランドによって単価にはっきりとした違いがあります。

次に、大学の立地とファーストフードチェーン店の分布の関係を調べていきたいと思います。
まず都内に存在する大学の概要について説明します。東京都には23区内に135校、23区外に67校、計202校の大学があります。23区内にある大学について、最寄駅から500m未満にある大学が88校、500m以上1km未満にある大学が44校、1km以上離れている大学は3校です。23区外の大学はそれぞれ9校、28校、30校となっています。
また図7のように、1つの大学の中心(大学敷地の重心)から500mの範囲に、他の大学がいくつあるか調べてみたところ、その大学しかない地区は140箇所、他に1つある地区は26箇所、2つある地区は11箇所、3つある地区は9箇所、4つある地区は5箇所、5つある地区は7箇所、6つある地区は4箇所ありました。

図7:大学周辺の測り方

では、大学の立地とファーストフードチェーン店の分布はどのような関係にあるのでしょうか。
まず、ファーストフードの店の数を区ごとに色分けしたものが図8です。色が薄い地域ほど店舗数が少なく、濃い地域ほど店舗数が多いです。


図8:ファーストフードチェーン店の店舗数(区別)

図8より区全体のファーストフード店の店舗数を見ると、1位が新宿区で59店舗、2位が渋谷区で50店舗、3位が世田谷区で46店舗となり、大田区、江東区がその後に続きます。
千代田区、中央区、港区といった都心3区がそこまで多くないことは意外ではないでしょうか。しかしこれらの区は面積が非常に小さいので、店舗数を面積で割ると違う結果になると想定されます。

大学周辺500mにある飲食店店舗数を可視化したものが図9で、大学周辺500mにある飲食店店舗数を大学数で割って基準化したものが図10です。


図9:大学周辺500mに立地するファーストフードチェーン店の店舗数(調整なし)

図10:大学周辺500mに立地するファーストフードチェーン店の店舗数(調整済み)

図8と図10を見比べると、いくつか面白い結果を見つけることができます。
足立区や中央区は、区内のファーストフードチェーン店の店舗数は他区と比較すると少ないですが、大学周辺に立地する店舗数は多いです。
これに対して世田谷区は、区内のファーストフードチェーン店の店舗数は他区と比較すると多いですが、大学周辺に立地する店舗数は少ないです。この要因は大学の位置にあると考えます。世田谷区には16校の大学がありますが、そのうち最寄り駅から500m未満に位置する大学は4校、500m以上1km未満に位置する大学は10校、1km以上離れた場所にある大学は2校あります。さらにこれらの学校はメインキャンパスでない場合が多いため、今回対象としたファーストフードチェーン店が大学付近に出店する効果はさほど高くないと推察されます。
図11では区で大学の立地場所が変わることを示しています。


図11:大学の立地場所について

まとめ

本記事ではファーストフードチェーン店の分布に着目し、大学とファーストフードチェーン店はどのような関係があるかについて考えてみました。ファーストフードチェーン店が大学周辺に立地する効果は、区で多少の違いがあることがわかりました。
今回は十数種類のファーストフードチェーン店に限定して分析を行いましたが、今後料理ジャンルを増やして分析することも検討しています。

出典

・ファーストフードチェーン店データ(2022年2月4日時点)
-お店・サービス(マクドナルド公式サイト)
-店舗・サービス(モスバーガー公式サイト)
-店舗検索(ケンタッキーフライドチキン公式サイト)
-店舗検索(フレッシュネスバーガー公式サイト)
-店舗検索(サブウェイ公式サイト)
-店舗紹介(バーガーキングR公式サイト)
-Shop Search(Wendy's First Kitchen: ウエンディーズ・ファーストキッチン公式サイト)
-店舗検索(ロッテリア公式サイト)
-店舗情報(アメリカンレストラン&バー TGIフライデーズ公式サイト)
-Locations(シェイクシャック Shake Shack公式サイト)
-店舗案内(ドムドムハンバーガー公式サイト)
・大学データ
-東京の大学一覧(大学受験パスナビ)
・背景地図
ArcGISが提供する無償の背景地図を使用しております。
-ArcGIS Online背景地図
-政府統計の総合窓口(e-Stat)

文責:中島美紅