講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


7. 誰も排除しない空間
松村:  個人的には、岡部さんがこうした活動をしていること自体が驚きです。幾度となく建築学会などでご一緒する機会がありましたが、ゴンジロウのような活動ができるパーソナリティじゃないと思っていました。でも、かや談義などに行ってみると、ハキハキとオーガナイズしていて、しかも10年間も続いている。
岡部:  自分でもびっくりしているんです。何でこういうことになったのかなって。私は必ずしもこうした活動に向いているわけではありませんが、そういう私が取り組んでいるから、普段は参加しないような人も参加できるのかもしれません。ゴンジロウでは月例の協議会を10年間ほど続けてきました。近所の方ではないのですが、すごく勉強熱心で必ずいらっしゃるおじいさんがいます。でも、長続きしているからといって、別に仲良くやってる感じではないんですね。
松村:  仲良くはやっていないというのは面白いですね。確かに熱量の大きいコミュニティ派みたいな人が引っ張っていると、来る人が限られてしまったりするかもしれません。
岡部:  私は共感というものを信じていませんが、誰も排除されないということは大切だと思うんです。だから私たちも排除されることがない。こういう活動を続けていると、どうしても一緒にいて心地よい人たちの集団になり易い。私はそれをひたすら壊すようにしています。
鈴木:  具体的にはどういうことですか?
岡部:  仲良くなると、他の人たちを排除しそうな気配が出てくるときがある。そうした時ですね、ちょっと違ったタイプの人に声がけして遊びに来てもらったりしています。もっとも本能的にやっていたので、意識的な行動ではなかったと思います。
松村:  それは岡部さんのパーソナリティですね。仲間のグループができると、排他的になっていく人たちが多いですから。
岡部:  房総には色々な活動があるので、道場破りというか、他の人たちがやっているイベントに、学生と一緒に私の方から出かけて行ったりもします。こっちが排除しないと考えているだけじゃ、結果的に排除したりされたりすることになってしまう。そういえば、初期のころ自分たちの企画に参加を呼びかけても、集落の人たちはなかなか参加してくれませんでした。だったら、こちらからお願いして地域行事に自主参加させてもらおう。例えば、塩見集落には毎月25日の朝8時から始まる常会があります。それに、浜掃除や神社掃除。年2回のお祭りは、高齢者が多いので最後は延々カラオケ大会です。ゴンジロウのプロジェクトに参加する学生は、頑張ってこれらの会合に出ることにしています。
鈴木:  学生が行ったら喜ばれるでしょうね。「朝早くから来てくれて、ちゃんとした学生さんだね」って集落の人は捉えていますよ。
松村:  岡部さん本人は共感を信じていないとしても、そういう行動原理の振る舞いには見えない。やっぱり上手い(笑い)。
岡部:  共感を求めて参加しているわけじゃなくて、全然違う世界が面白いから行っているだけなんですけどね。



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