講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


8.居住者インタビュー4:リタイア後の暮らしのイメージを持つこと
鈴木:  大阪でも戸建住宅にお住まいだったんですか?
岡田:  マンションです。みなさんご存知の千里ニュータウンにありました。
松村:  千里に住むのは仕事をするため、いわば通勤するライフスタイルと一体のものであって、仕事を辞めるということは千里を引っ越すということを意味していたわけですか?
岡田:  ええ。
松村:  立ち入ったことを伺いますが、奥様もそういう考え方を共有されているんですか?
岡田:  付き合った時から共有していました、たぶん(笑い)。

結婚する時には、同じような認識をもっていたと思いますよ。私は若い頃から、50歳を越えれば仕事はもう十分だろう、と思っていましたし、家内とも話し合ってきました。
松村:  結婚した頃から話し合ってきたんですか!50歳になったら仕事を辞めよう…。北海道かどうかは分からないけども、都会から離れようと…。
岡田:  いえ、行き先は北海道。
松村:  えっ、北海道も決まっていた!そうですか、それはうまいこと行くでしょう。そうした積み重ねがなく、突然思い付いたように言ったらダメでしょうね。
岡田:  それはそうでしょうね。「お父さん一人で行ってきて。私はここに居る」みたいなことになるでしょう(笑い)。
松村:  やはり、引退後にライフスタイルを大きく転換するには、早くからイメージしていることが大切なんですね。

つい最近のことですが、住まいの意識調査の結果を見ていたら、「これからの暮らし」という設問があって、50歳代男性のかなりの割合が「自然」とか「田舎」といったキーワードに反応している。ところが、同年代の女性はそういったものにほとんど反応しなくて、「都会」とか「便利」というキーワードに反応している。もし、夫婦がリタイア後の生活イメージを全く話し合わずにいると、リタイアして初めてこうした価値観の違いに直面してしまう。
岡田:  忙しい30歳代の時に少しでも考えるきっかけを持てれば、そこまでは違わないでしょうね。まあ、夜ごと酒飲んでいたらあきませんわな(笑い)。
松村:  まずい。来年50歳なのに、リタイア後のことを家内と話してこなかった。夜ごと酒も飲んでるし。
岡田:  何も、リタイア後のことだけ考えて生活していたわけではありませんよ。若い頃は、定年前には辞めるというイメージが漠然とあった程度です。時折それが頭の中に浮かんできて、40歳代半ば頃になって、そろそろ具体化していかなければいけないなと思うようになった。それまではみなさんと一緒で、よく酒飲んでいましたよ(笑い)。
松村:  そうですか。なんとなくホッとしました。これから先の生活イメージはいかがですか。ずっとここで暮らして行くイメージをお持ちですか?
岡田:  現実の話になりましたけれども、私達が70歳を超えてからもここで暮らせる自信は、心もとないです。

と言いますのは、冬の除雪にしてもトラクターレベルの除雪機がないとすっきりとした対応は難しいですね。でも、そういったものに多額のお金をつぎ込むことは厳しい。冬の生活に必要な経済的なもの、あるいは体力的なものが私達の場合は70歳までもたないような気がする。まあ、ここでダメになった先のことも考えています。
松村:  ああ、そうですか。いや、そうじゃないかなと思ってお聞きしたんですが、やはり考えていらっしゃいますね。
鈴木:  積雪がすごいというお話ですが、この辺りはどれくらい積もるものなんですか?
岡田:  軒先まで屋根に降った雪が溜まります。放っておくと窓から景色が見えなくなります。それで、近くの農家の方にお願いしてトラクターで跳ね飛ばしてもらっています。機械をもってないとできません。
松村:  そうですか。それはやっぱり大変だわ。
長時間、立ち入ったことまでお聞きしまして、ありがとうございました。個人的にも大変参考になりました(笑い)。



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