ライフスタイル考現行


8.みはらし亭
豊田:  尾道で観光客が一番集まるのが千光寺の参道です。「みはらし亭」は、折箱製造で財を成した石井譽一という方が1921年に建てた別荘で、参道の一番上にあります。戦後は持ち主が変わって旅館になり、ここ20年ほどは空き家になっていました。空き家バンクに登録された2009年から、色々なワークショップや調査をしながら新たな活用方法を模索してきましたが、尾道観光のメインストリート沿いにあるいい建物なのに借り手は見つかりませんでした。
尾道では山の手の斜面に建つ別荘を「茶園」と呼びます。もともと山の手の土地は寺院が所有していましたが、江戸時代後期から豪商の茶園が建てられるようになり、昭和初期には茶園文化が花開きました。みはらし亭はそうした茶園文化を代表する建物です。買い手がいないのなら、私たちでゲストハウスとして再生しようという事になり、2014年から再生プロジェクトを開始しました。
松村:  車は入ってこれませんよね。どうやって資材を搬入しましたか。
豊田:  ボランティア50人くらいが一列に並んで手渡しリレーで運びました。ですから、お祭り騒ぎみたいな感じです(笑い)。それに石垣の上に建っているので、運び込んだ足場材を組み立てるのもかなり大変でした。瓦は全て下ろして、使えるものは洗ってよく見える部分に再利用しています。見えないところでは鉄骨を使った構造補強もしていて、小学校と同じくらいの耐震性を確保しています。




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