高齢者等住まい関連施策について
 〜ハウスメーカーへの期待〜

国土交通省住宅局安心居住推進課 課長 上森康幹

(一社)住宅生産団体連合会「成熟社会居住委員会」は、高齢者住宅や郊外住宅地活性化などに関する調査研究を行い、まちづくり住まいづくりに関する政策提言を検討しております。令和4年度の第1回委員会では、国土交通省住宅局安心居住推進課の上森課長から、新たな住生活基本計画と住宅セーフティネット制度についてお話を伺い、高齢者の住まいとまちづくりに関するハウスメーカーの役割について意見交換を行いました。

(1) 高齢者を取り巻く現状

1) 高齢者世帯の増加と住まいのニーズ

 皆様もよく御存知の通り、我が国の人口は平成20年 (2008年) 頃をピークに減少し、世帯数は2015年まで増加を続けているものの、来年2023年以降、世帯は減少に転じると推計されています。世帯数減少の一方で、高齢者単身世帯、高齢者夫婦世帯は増加し、2030年には合計で約1,500万世帯となる見通しです。また、介護や見守りが必要な高齢者の増加高齢化の進展に伴い、要介護・要支援や認知症の高齢者数が増加しており、今後も増加する見込みです。以上は政府の全世代型社会保障構築本部でも議論されており、その資料として「2040年までの人口等に関する短期・中期・長期の見通し」がまとめられています。
 高齢者の介護場所のニーズについてですが、高齢者の約8割は持ち家であり、介護を受けたい場所については、自宅のニーズが最も高くなっています。また、終活期に住みたいところとしては、「その時に住んでいる家」の割合が最も高く約7割を占めています。しかし実際の死亡場所を見ますと、1950年頃はほとんどの方は自宅で亡くなっていましたが、その後病院で亡くなる方が増え、現在は約7割となっています。
 国交省のモニターアンケートによる高齢期の住み替えニーズですが、高齢期にできれば住み替えたい人は約3割おられます。住み替えたい理由としては、「高齢者に適した大きすぎない住宅に住み替えたい」、「買物、医療等の利便性を向上させたい」の割合が高くなっています。バリアフリー性能や断熱・省エネ性能といった個々の住宅の性能よりも利便性を重視している方が多いという結果となっています。
 平成29年度国交省白書の「今後求められる住まい方」によると、全世代において、介護が必要になっても安心して暮らし続けられる住まいが求められています。さらに高齢になられた方では、同居・近居を求める方が多くなります。同居・近居に焦点を当てた施策として、例えばURにおいて近居割が進められています。
 介護が必要になったら地域で介護を受け、病気になったら地域の医療施設を利用するといった、地域に安心して住み続けるための地域包括ケアシステムの構築が、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に進められています。地域で住み続けるための住まいとして「できる限り自宅で」か、あるいは「地域の高齢者向け住まい・施設への転居」かは本人の選択によりますが、自宅についてはバリアフリー化や介護を受けるための設えを考える必要があり、高齢者向け住まい・施設については十分な情報収集・検討が重要になります。