令和3年度の高齢者住宅政策、
 並びに民間事業者に期待する役割について

【質疑応答・意見交換】

成熟研吉田座長:省令改正や地域に開かれたサ高住については、事業者が色々やってみたいと考えても、自治体によってできるところとできないところがあります。例えばレストランなど地域を解放するときに、了承してくれる自治体もあれば、補助金でやっているのだからと、入居者以外への食事提供は認めない自治体もあります。そのときに諦めるのではなく自治体を説得するために、国の考えを自治体に実証する手立てはあるのでしょうか。今回の省令改正で、自治体の考えが変わるということはあるのでしょうか。
上野専門企画官:ご指摘の通り難しい部分もありますが、形式的に何が変わるというよりも、実行することでどういうことが可能なのかというのを地方公共団体の方に理解していただくことが、積極的に進めていく上で重要だと考えます。地方公共団体の方に今回の見直しの意義を伝えるという思いの一方で、サ高住が有料老人ホームに該当するため有料老人ホームの指針に則った指導がなされる状況の中で、常駐要件がどこまで認めてもらえるのかといったところは答えがまだ出ていません。
成熟研吉田座長:人がいるかどうかで判断されてしまい、ICTでは辻褄が合わないとされることがあるかと思われます。我々もコロナ禍の中でせっかくICTやRT(ロボット技術)を組み込んでいるので、何か仲裁窓口など、判断してくれるところがあればとお願いしたいと思います。グレーゾーンを解消するために、第三者的に自治体と事業者の間に入って、こういうものだと言っていただくところがないかと思います。
 8050問題に関してですが、例えば80代の親と50代の子どもをサ高住入居対象とすることを、省令改正やパブリックコメントでの意見への対応などで認めることは可能でしょうか。
上野専門企画官:ご意見を踏まえてすぐに省令を見直すことは難しいですが、サ高住の原点には、お1人でお住いの高齢者に、家族の代わりに見守りや生活相談を提供するということがあります。8050問題については、実態として、子どもが親を見守れるような人ではないということが問題になっていると考えられます。
成熟研吉田座長:親思いのお子さんが親を預けるときに選ぶところがない場合がある一方で、引きこもり気味の子どもが親をあてにしている場合もあります。また最近ですと、昔はほとんどありませんでしたが、兄弟で住むとか昔の仕事仲間と住むということがゼロではない状況です。今と昔とで暮らし方が変わっているので、夫婦ではなく親子や兄弟で住むことに対して、年齢制限をつけてしまうのはどうなのかと感じました。
上野専門企画官:高齢者向け住まいも飽和していく時期を見据えると、立地的に不利なところで運営されているところがかなりあり、今後どうして行くか問題意識を持っています。一つの方法としては、高齢者だけを対象にしない住宅に転換していき、共生社会におけるコミュニティをうまくつくっていくことが考えられます。そうすると8050問題の対象になってくると思います。
成熟研吉田座長:高齢者以外の家族を入れるメリットとしては、例えば我々がやっているホスピスでは、コロナ禍の中でも10分から30分間、家族面会をするだけで明らかに元気になります。家族が一緒にいることは、入居者の健康増進にいいと思います。
成熟研委員:お話を聞いていて、特に長年の懸案であった、サ高住の常駐の緩和に興味がありました。上野専門企画官には、サ高住が地域とどう溶け込むかといったところもこれから取り組んでいただけるとありがたいなと思いました。
高住協:住まいの改修ガイドライン普及やサ高住の検索システムの更新など、高住協が担っている事業が多いので頑張っていきたいと決意した次第です。
高住協:昨年の2月から高齢期の住まいを提案できる人材のeラーニング講座をスタートしております。大変好評で、たった2ヶ月間でしたが200人以上のご受講をいただきました。地場で事業をしてらっしゃる小規模の事業者さんもそういうノウハウを必要とされていましたので、また皆さんにご指導いただければと思います。今日はありがとうございます。
成熟研委員:早めの住み替え、早めのリフォームという「早めの」というところが健康寿命を伸ばすためにポイントだと共感しています。お客様自身もそのときになってからでないと選ばないので、こちらが住環境を早めに整える意義を伝え切れないという力量不足もありますが、お客様自身もまだ元気だから必要ないと、結果的にリフォーム市場は伸びていかないという面があります。ガイドラインができても課題は解決してないので、どうしたら普及していけるのかをご意見いただけますでしょうか。
上野専門企画官:早めの住み替えが誰のためかがなかなかうまく伝わらないこととと、アンケートを見るとできるだけ自宅で最期を迎えたいという方が多数おられる中で、早めの住み替えがいいと言っても響かないのは確かだと感じています。住み替えて5年や10年住めば、そこも住み慣れた自宅になると思う一方で、愛着のある自宅には子供と過ごしたことなど別の要素も絡んでおり、自宅で改修をしながら住み続けたいとなるのかなと思います。このあたりは咀嚼しきれていない部分ではありますが、うまく伝えていく方法を一緒に考えていければと思います。
成熟研委員:自分の頭を整理して背中を押してくれるような動機付けが支援としてないと、高齢期に意思決定は難しいと思うので、それができる人材育成や相談窓口の仕組みもより強化していければと思っています。
高住協:ガイドラインの普及事業についてですが、私の出向元では定年を迎える人に対してのセミナーをずっとやっていまして、そこでこういうガイドラインがありますよという呼びかけをしてもらう機会が今年からできました。呼びかけは今月から始めるのですが、高住協や住団連の会員企業にも呼びかけをしていき、早めのリフォームを企業社員の方々が率先して行っていただければいいのかなと思っています。


以上