昭和二桁世代が新たに高齢者マーケットに参入してくる状況下で、従来の「明治・大正」世代の方とはそもそも住宅に求めているニーズが変化してきているのではないだろうか。
そこで第1回の今回は、これからマーケットに参入してくる「50代からの居住者ニーズ」を探るため、マーケットの情報発信などを行っているリクルート「楽家」編集長の西川氏を講師に招き
「50代からの住まい選びにみる熟年層の居住ニーズ」について講義をしていただいた。
新しい時代の高齢者 のニーズやマーケットが現在どのようになっているのか 、を明らかにしていく。

■主 催
高齢社会研究会
■日 時
 

平成16年8月24日(水)

  18時00分〜20時30分
■会 場
 

住宅生産団体連合会 会議室

 

1.挨拶
園田眞理子(明治大学助教授)
2.第1部 講演「50代からの住まい選びにみる熟年層の居住ニーズ」
  講師 西川裕子氏(リクルート「楽家」編集長)
3.第2部 座談会
  司会進行 園田眞理子(明治大学助教授)
  メンバー 高齢社会研究会
    住宅生産団体連合会会員企業メンバー
 
あ
   
 

昭和2桁世代が新たに高齢者のマーケットに参入するにあたって、そうした新世代高齢者が高齢期のくらし方や住まい方に関して、どのようなニーズを持ち具体的に行動するのか。
その内容をを中心に西川氏に講義をしていただいた。

◆ マンション購入者の推移
  50代以上のマンション購入者数の割合は、97年では全体契約者のわずか10.0%を占める程度だったが2001年には25.7%と増加している。今後、さらに増加するであろう。
◆ 購入の動機
  50代以上の購入の動機は、明確なきっかけというよりも、今の状況を基準に「もっとよくしていきたい」という希望が多く見られる。
◆ 購入経験
  50代以上の購入経験は2次取得者が中心で60代以上の方では78.8%の割合で2次取得者である。また、低価格物件を買い増しするというマルチハビテーションのケースも多い。
◆ 50代以上女性の購入検討状況
  50代以上女性のなかで「住宅購入・リフォームなどを検討している、いつかは検討したい」と思っているのは約4割に達していて、住宅購入・リフォームの検討予備軍といえる。
◆ 50代以上女性の生活実態
  50代以上の女性の生活は、趣味・旅行・買い物など、実にアクティブである。それには子育てが一段落し、自分の時間を持てるようになったことも要因となっているようだ。
 
 第1部の結果にもとづき、「50代以上のすまいのニーズ・マーケット」について、さらに掘り下げて議論した。

  1. 熟年マーケットはやはり“女性”が握っているのか?
    活動的で初めて戦後の教育を受けた世代の女性はやはり強い。
また、夫と同年齢の場合も多いので、夫とは対等で若いときから議論しけんかも遊びも一緒に行動しているので、夫は夫、妻は妻というように自分の意見・趣味をもっている。
 
  2. 熟年期になっても、40代くらいで購入した郊外の戸建に住み続けるパターンが多いのか?
     40代と熟年期では、何をしたいか、どこへ行きたいか、など行動範囲も異なり、それに伴って好む場所も変わってくるので住み替えのニーズはあるのではないか。
 
  3. 50代・60代で転居してもやはり70代以降でもう一度、施設などへ移るのか?
    体が悪くなったときのことを考えて、実際には病院の近くなどを選ばれている。しかし、どうしても体が動かなくなったら施設へと移られるケースもある。
 
 
  4. 物件選びは「60代で決着」とのことだがやはり定年後に動くのか?
 

  50代前半でも住み替えを想定している人が多くいて、「いいものがあればすぐにでも」と思っている。定年まで4〜5年の猶予があるので物件探しは「急いではいないが、決断するときはスパッと決断」するように感じる。

   
 
  5. 資金計画について、購入者は全体の資金の中でどこまで住宅につぎ込めると考えているのか?
    すべて住宅のために使うというのではなく老後の旅行や遊びのために残しておきたいと思っているようだ。支払い可能金額の約8割ほどを予算にしているようだ。
   
 
  6. やはり新しく物件を購入すると、元々の物件は「売却」になるのか?
  子供のことを考えたり、夫が愛着をもっているなどの理由で「残す」こともある。しかし結果、「売却」となるケースが多い。「賃貸化」も繁雑な部分も多いのでなかなかされていない。