世界の環境共生住宅 -03

エコロニア・エコロジー団地

DATA

 
■立 地 オランダ アルペンアンデライン (アムステルダム郊外)
■竣 工 1993年
■規 模 開発面積 約2ha(供給戸数101戸)

オランダ政府のエネルギー環境庁と公共住宅推進機構が共同して、大規模で実験的な環境にやさしい住宅団地「エコロニア」は事業化されました。その際に、同庁は3つの明確な開発指針「@省エネルギー、A資源のリサイクル、B住宅の品質」を開発者に課し、その指針をもとに、役割分担された9人の建築課によってやさしい環境のまちがつくられました。


エコロニアは、工業団地に隣接する住宅団地の一部に位置し、開発面積約2ha、総戸数101戸のエリアで、様々な実験的な取組が試行されています。住宅の設計を担当する建築家はコンペで選ばれ、団地の全体計画とコーディネートは、ベルギーの建築家ルシアン・クロール氏が担当しました。
開発に際しては、干拓地であったためオランダの国づくりの伝統である治水などの基盤整備から始まり、住宅郡の集合形態や外部空間のあり方には、エコロジカルなまちづくりの概念が反映されています。
また、各住宅は設計条件として共通の環境共生的な要素が求められ、さらに、合計9通りのテーマを持った住宅タイプに細分化され、特徴的で多様な住宅団地が形成されています。

エコロニアの中央に配されている池は、敷地から流れ出す雨水を集める調整池になっています。池の水深は30cm程で、雨水はアシや池に生息する微生物によって浄化された後、排水される仕組みです。また、大規模な開放水面であるため、蒸発による湿度調節機能と快適なレクリエーション空間を提供しています。


角地に建つ住宅は、周辺の住宅より1層分高い部分があり、クルドサックの樹木と重なりあって、印象的なまち角を創出しています。

まちづくりでは、住民が主体の歩行空間をつくることが求められ、クルドサック道路や通り抜けの路地空間が整備されています。また、まちが作られた後、住民の声によって、車の交通を制限するエリアが設けられました。
 
「節水と建築材料の再利用」をテーマとした住棟には、風除室の分別ごみ置場や節水型の設備機器など資源を有効利用するための様々な取組がなされています。この住棟では、一般の住宅より約22%の節水を実現しています。また、建材については、200年先に解体した際にもリサイクルできることを条件に検討したそうです。

各タイプの住宅で実施された実験的な取組の効果を知るために、消費エネルギー量の調査が実施されました。その結果からエコロニアの住宅は、一般的な住宅に比べて約60%のエネルギー消費量であることが分かりました。(天然ガス換算:エコロニア住宅1200m3/年、一般住宅2000m3/年)


エコロニアの住環境は住民同士のモラルで守られていて、特に管理組合などはありません。まちの構造が管理協定のような働きをしているそうです。例えば、洗車をするとその排水は全て池に流れ込み、魚や水草に影響を与える。その結果、池から悪臭がするようになるので、その様なことはしないなど、基本的なことですが、このように、住民がまちづくりと住宅づくりを良く理解していることによって、まち全体が快適に保たれています。

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