金沢のこまちなみ保存

金沢といえば伝統的なまちなみが有名な観光地です。観光名所の中でも最も有名なのが「兼六園(写真1)」ということからも分かるように、京都や奈良のように特に有名な寺社があるわけではありません。しかし、川や山などの自然に恵まれた土地と美しいまちなみが観光資源となり、私たちが訪れた際も「ひがし茶屋街(写真2)」や「長町武家屋敷跡(写真3)」は観光客で溢れていました。

nakata_10.jpg (写真1)


nakata_11.jpg (写真2)


nakata_12.jpg (写真3)


市の行政でもまちなみに関しては力を入れています。景観条例で指定区域の景観や眺望景観を守ることをはじめ、「こまちなみ」「用水」「寺社風景」「斜面緑地」に関しても条例を制定し保存に力を入れているようです。(詳しくは市のホームページ「いいねっと金沢」参照)特に「こまちなみ」の保存条例は金沢市独自の取り組みです。定義は「歴史的な価値を有する武家屋敷、町家、寺院その他の建造物又はこれらの様式を継承した建造物が集積し、歴史的な特色を残すまちなみ」、つまり広い範囲ではないが後世に残しておきたい歴史的なまちなみを保存するものです。

私たちは今回この「こまちなみ」に指定された区域を調査してきました。「こまちなみ」というだけあり十件前後の歴史的な建物が区域に集積しているというものでした。そのほとんどが一般の住宅で、特に観光名所が含まれているわけではありません。こうした条例とそれに伴う助成がなければ、いつかは消えてしまうかもしれないまちなみです。現状は歴史的な建物とそうでない建物がいくらか混在しており残念ですが、この取り組みを続けることで将来的にはさらに特色のあるまちなみとなっていくことが期待できるでしょう。

それではいくつかの区域を写真でみてみましょう。

nakata_13.jpg 里見町区域です(写真4)。


写真には写っていない側は現代風の住宅が建っており残念ですが、伝統的な住宅の方は手入れが行き届いており美しい状態で保存されていました。土壁が金沢の特色を表しています。

nakata_14.jpg 水溜町です(写真5)。


左側は新しい塀ですが右側の塀との調和がとられています。また、舗装にも配慮がなされています。

nakata_15.jpg この通りを抜けたところを大通り側から眺めたところです(写真6)。


写真中央部が通りの入り口です。このように一見すると見過ごしてしまいそうな路地に美しいまちなみが残されています。今後は古いまちなみを保存するだけでなく、新しいまちなみと古い街並みが一体となるような配慮がなされていくとよいと思います。

「こまちなみ」の事例から魅力あるまちなみに関する取り組みは観光地に限ったことではなく、完成されたまちなみでなくとも保存する価値があると思いました。美しいまちなみをつくるためには大きな範囲での規制と共に、こうした小さな単位で魅力あるまちなみを発見し、広げていくことが大切なのではないでしょうか。
(文責:中田早耶)

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