シドニー

シドニーは、オーストラリアにおける最大にして最古の都市です。とはいってもその歴史は意外に新しく、1800年代にヨーロッパ人によって開拓されて以来、200年の間に今の姿にまで急速に発達してきました。現在では、オーストラリアの経済・文化・流通の中心地であると同時に、オペラハウスやハーバー・ブリッジで有名な世界的な観光都市となっています。(写真1、写真2)

オペラハウスとハーバー・ブリッジ (写真1)オペラハウスとハーバー・ブリッジ
オペラハウス (写真2)オペラハウス


シドニーの街を歩いて気が付くことは、その歴史的建造物の多さです。街中では築100年以上の建造物を至る所で見ることができ、まるでヨーロッパの古い街並みを歩いているかのような感覚を覚えます。実際、シドニーは今なおイギリス文化の影響を強く受けた都市であり、地名や通りの名前にはロンドンにあるものが多く付けられています。

セント・メアリーズ大聖堂 (写真3)セント・メアリーズ大聖堂
シドニー中心街 (写真4)シドニー中心街


また、これらの歴史的建造物は州政府や自治体のヘリテージ・リストによって管理され、改築や開発行為に規制が加えられています。しかし、歴史的建造物の周辺では開発の波にもまれ、近代的な高層ビルが数多く建設されています。(写真5、写真6)このような「虫食い」状態は日本の街並みに通じるものがあると言えます。

(写真5)新しい建物と歴史的建造物の混在
(写真6)歴史的建造物と高層ビルが隣接している


いかに歴史的な街並みと近代的な街並みを融合させ、よりよい街並みを作り上げていくのか。シドニーにおいてはこの問題に対して、次のようなアプローチが取られています。

それは、単に歴史的建造物を保存するだけではなく、「将来の発展のための開発」も必要であるとし、建物用途の変更を促進するという考え方に基づいています。 その1つの例をクイーン・ビクトリア・ビルディング(以下、QVB)に見ることができます。QVBは1898年にビクトリア女王即位50年を記念して建てられたものです。現在では200店舗がひしめく「世界で最も美しいショッピングモール」と呼ばれています。
このQVBは必ずと言っていいほどガイドブックにも取り上げられており、シドニーにおける観光客に人気のスポットになっています。店内には比較的高級感のあるブランドが軒を連ねており、それが建物の雰囲気と相まって、非常に洗練された印象を受けます。(写真7、写真8)

QVB1 (写真7)クイーンズ・ビクトリア・ビルディング
QVB2 (写真8)内側は吹き抜けになっている


このように、歴史的建造物の有する「歴史性」や「美しさ」に加え「現代の利便性」を備えることによって、地域の活性化を図るのがシドニー流の歴史的建造物保存の考え方と言えるでしょう。(文責:三浦佑介)