うだつのある宿場町〜海野宿〜

海野宿

長野県東御市、海野宿へ行ってきました。海野宿は江戸時代に栄えた宿場町です。明治時代には宿場町としての機能はな くなり、養蚕のまちとして栄えたそうです。江戸時代、旅館として使われていた旅籠造りの建物、明治時代、養蚕に使われて いた蚕室造りの建物が混在して残されています。昭和62年に重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。 しなの線田中駅から歩くこと20分。神社を始点として、急にノスタルジーなまちなみが広がります。道路は水路により歩道 と車道が分けられています。水路は元々、馬の水飲み場として利用されていたそうです。水路と建物の格子がなんとも美しい 景観をつくりだしています。

(写真1)

海野宿の建物の特徴として、うだつと海野格子があげられます。「うだつが上がらない」という言葉もありますが、うだつは 大変高価なものだったそうです。江戸時代の本うだつ、軒うだつと明治時代の袖うだつが見られます。うだつは火災の延焼 を食い止める役割を担っていたそうです。

(写真2)袖うだつ


(写真3)本うだつ


海野宿の建物はそのほとんどが格子で覆われています。2階には縦の格子の長さがリズミカルに変化している 海野格子が見られます。

(写真4)海野格子


海野宿の中でも一際、目を引く立派な門。門を開いたままにし、沿道から庭が見えるようになっていました。 まちなみを大切にする心遣いを感じました。

(写真5)開け放たれた門から庭が


養蚕を行っていたと思われる建物には気抜きのための櫓が付いています。合掌造りのように屋根が大きい建物もありました。 屋根裏で蚕を育てていたのでしょう。

(写真6)大きな屋根の住宅


(写真7)櫓がついた住宅


海野宿にある建物のほとんどが現在では一般の住宅となっています。人々の生活が垣間見られるのも海野宿のよいところだ と思います。しかし、現代的な生活は時に伝統的なまちなみを汚してしまいかねません。海野宿では歴史的なまちなみと現代の 生活がうまく共存できているように感じました。一見、普通の住宅でも江戸時代の屋号が付けられています。新しく建物を建設 する場合、沿道には当時の建物を残し、新しいものは裏につくるようにしているそうです。消火器やゴミ置き場にも格子の要素 を取り入れ、まちなみに合ったデザインが施されています。重要伝統的建造物群保存地区に指定され色々な規制がかかっている のも事実ですが、住人がまちを大切にしていることが、美しいまちなみの形成に繋がっているのではないかと思いました。見学 中も住人の方が話しかけて下さり、熱心にまちのことを色々と教えて下さいました。美しいまちなみをつくるにはそこに生活す る人たちのまちへの思いが必要だと実感しました。(文責:平松彩奈)

(写真8)屋号のついた住宅


(写真9)格子で囲われた消火栓


(写真10)木でつくられたゴミ置き場