写真2. ロイヤルマイル(セント・ジャイルズ大聖堂付近から東向き)
写真3. 多くの店舗が立ち並ぶプリンシズ・ストリート
◆エジンバラトラム
エジンバラトラムは、エジンバラ空港から市中心部のエディンバラ・ウェイヴァリー駅を経て、港のあるリース(Leith, 写真4)まで23の停留所を結ぶ総延長18.5kmの路面電車である(図)。2014年にトラムが開通するまではバスがエジンバラの主要な公共交通機関であり、現在も多くのバス路線が市内の広範囲をカバーしている。
実はエジンバラでは1871年から1956年までトラムが運行されていた(当初は馬が牽引、後に電化)。モータリゼーションにより公共交通機関としての主役の座をバスに譲ったものの、温室効果ガスの排出量を抑えた環境に優しい交通手段との期待から復活した形になる。持続可能性に対する社会的要請を受けた路面電車の復活は、バーミンガム、マンチェスターなど英国内のいくつかの都市と共通しており興味深い(写真5)。
閑話休題、現在のトラムはバス中心であった空港へのアクセスを改善し、観光客の移動を容易にした。広々とした車内空間には大きな荷物や自転車を持ち込め、大きな窓からは美しい街並みを眺めることができる(写真6)。例えば、空港から市中心部のプリンシズ・ストリートまではわずか30分で到達できる。電動のため静かで振動が少なく、低床のためスーツケースを持った観光客やベビーカーの親子連れも乗り降りがしやすい。外観は、歴史的な景観に配慮して色彩を抑えたらしいが、写真3のようにラッピング広告が施された車両を見ると必ずしもそうとは言えないようだ。
トラムは一部区間において専用軌道を走るものの、市中心部では道路上に敷設された併用軌道を走行する。専用信号機や優先通行権によりもちろん自動車交通が干渉することはないはずだが、バスや自転車も軌道上を走行することがあるため、見ていて肝を冷やすことがたびたびだった。
写真4:カールトンヒルからリース方面をのぞむ
図:エジンバラトラムの路線図
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写真5:マンチェスター・メトロリンク(マーケット・ストリート駅にて)
写真6:エジンバラトラム(エディンバラ・パーク駅にて)
◆トラムと街の将来
ともあれ、トラムは空港や鉄道駅などの交通拠点と市内の商業・観光地を効率的に結ぶことで利用を増やしており、コロナ禍前の2019年には利用者数が約745万人に達した。筆者が訪れた2023年8月の利用者数は120万人を超えて月間記録を更新した。トラム沿線では新たな住宅や商業施設の開発が進んでいる。
こうした追い風を受けてトラムが延伸されるのではないかという声も聞かれる。現在の路線に決定する前には、市中心部から大規模開発が進むグラフトン地区まで北に延びる区間や、空港より西側の区間も提案されていたが、費用高騰により断念された経緯がある。これらの提案が復活してさらに発展する街を見たい一方で、街並みや雰囲気は変わらずにあって欲しいとも思う。
◆参考(2023/10/27閲覧)
•Edinburgh Trams: https://edinburghtrams.com/
•Wikipedia: https://en.wikipedia.org/wiki/Edinburgh_Trams
(文責・写真:樋野公宏)