写真5:相方積みの石垣とヒンプン(左)と野面積みの石垣(右)
◆土地総有制
久高島では、国有地や電力会社の用地を除き、「字久高」名義で土地を登記・所有する「土地総有制」がとられています。琉球王朝からの「地割制」が県内で唯一残る地域で、明治32年(1899年)に実施された沖縄県土地整理事業でも、土地の私的所有には移行せず、総有制を守り続けました。その後、土地の利用実態や管理方法の変遷を踏まえ、1989年に「土地憲章」が制定されました。それまでの慣習を整序し、新たな土地利用の発生を考慮して規範を刷新したものです。もちろん、居住地や農地も利用権を有するのみです。なお、土地所有主体である「字久高」の構成員は、おおむね自治会の久高区と重なっていますが、完全には一致しません。たとえば、久高区の住民であっても、構成員資格(3年の居住要件)を満たしていなければ「字久高」の構成員にはなりません。この「土地総有制」により、久高島はリゾート開発などの乱開発から守られてきたと言えます。
◆島民との思いがけない交流
島を一通り回り終えた夕暮れ時、海の見える港近くのベンチでゆんたく(おしゃべり、団らん)している3人の年配男性から「一緒に飲もう!」と声を掛けられました。島民と話す絶好の機会を逃すまいと応じたところ、オリオンビールに古酒(くーす)、手作りの料理までご馳走になり、島での暮らしやその変化について聞くことができました。薦められた食堂でイラブー汁を堪能した後、宿泊先の久高島宿泊交流館へ戻ると、入口横のテントに出現した「居酒屋てぇげぇぐゎー」(てぇげぇはテキトー、ぐゎーは小さなもの)から、今度は4人の年配男性に誘われました。久高島の方言を教えてもらったり、三線(さんしん)を弾かせてもらったり、素手でイラブ―(※有毒)を捕る方法を教えてもらったり、ヤシガニと星空を観るナイトツアーに連れて行ってもらったりと、想像もしていなかった楽しい時間を過ごすことができました(写真6)。
今回初めて訪れた久高島は、「神の島」という名前から想像していた張り詰めた空気感とは違って、優しい光に包まれた温かい雰囲気の島でした。私たちのように島に宿泊する人は多くありませんが、久高島には年間4万人を超える観光客が訪れています。観光振興が島の生活・文化の維持を妨げないこと、さらにはプラスの効果をもたらすことを切に願っています。
写真6:ピザ浜から見た朝日
(文責・写真:樋野公宏・綾美)
◆参考文献
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南城市ホームページ
・三木健編『沖縄と色川大吉』, 不二出版, 2021年
・小川竹一「久高島の土地総有制の意義」, 地域研究, 13, 195-212, 2014年
・比嘉康雄『日本人の魂の原郷 沖縄久高島』, 集英社新書, 2000年