まちなみに配慮した住まいづくり
 −部位別提案手法マトリックス−
さまざまな提案により1戸の住宅が建替えられるとまちなみにどのような効果が現れるのでしょうか?
実態調査や生活者のヒアリングを通し、問題点として、圧迫感、閉塞感、危険、暗い、不安感、不統一、雑然、無配慮、殺風景、単調などが、よい点として、温かさ、やわらかさ、落ち着き、変化、個性的、潤いなどがそれぞれキーワードとして抽出さました。まちなみを改善するということは、いわばこのような問題点をいかに解消しよい点を増長するかということです。

美しいまちなみ実現のための資料として、横軸に「まちなみの構成要素」を、縦軸に「期待できる効果」を並べたマトリックスを作成しました。
このマトリックスは、冊子「まちなみ配慮したすまいずくり」のデータを基に、Web用に再構成したものです。

横軸の「まちなみの構成要素」は、まちなみを、大きく3つの要素に分け、さらに、その要素を部位に分けました。
マトリックスには現れませんが、各部位は、さらに街並み改善のための具体的手法と適用分類という項目を含んでいます。
具体的には、以下の表のように整理されています。

要素 部位 具体的手法 適用分類
4N 4W 6N 6W
建物 1.全体配置 a.後退する    
b.雁行配置する    
c.アルコーブを作るよう配置する    
2.屋根 a.スカイライン(勾配)を工夫する    
b.素材を工夫する    
c.付属物の納まりをよくする        
3.外壁 a.形態を工夫する    
b.素材を工夫する    
c.緑化装置をつける    
d.花など植物を飾る        
4.開口部 a.窓の位置や大きさをそろえる    
b.窓の大きさ・形状等に変化をつける    
c.花台など取付け、植物を飾る        
d.格子・装飾をつける        
5.出入口(玄関・勝手口・車庫) a.入り口方向に注意を払う    
b.ちょっとしたスペ−スをつくる  
c.扉の素材を工夫する        
6.バルコニー・ルーバー a.形態を工夫、空間をつくる    
b.手摺・ルーバーを工夫する    
c.手摺りを植物で覆う        
7.内外空間 a.サンル−ムをつくる        
b.居間の連続で半戸外スペースをつくる        
8.付帯設備 a.メーター・設備機器類を納める        
b.室外機を隠す        
c.建物と一体の物置とする        
外構 1.擁壁 a.形態を工夫、高さをおさえる    
b.素材を工夫する        
c.緑化する(植物を飾る装置をつける)    
2.囲い a.形態を工夫する        
b.素材を工夫する    
c.装飾をつける    
d.生垣により囲う        
e.緑化する(植物を飾る装置をつける)    
3.アプローチ a.門柱を工夫する        
b.ゲートをつける        
c.素材を工夫する    
d.植物を配置する        
e.足元を緑化する        
f.灯りを工夫する        
4.階段 a.形態を工夫する        
b.素材を工夫する        
c.植物を配置する        
5.カーポート・自転車置場 a.場所をつくる        
b.ゲートをつける        
c.素材を工夫する        
d.足元を緑化する        
e.透過性ある扉をつける        
6.デッキ・テラス a.カーポート上部を利用する    
b.室内空間を広げる        
7.境界領域と庭 a.敷地延長部分をつくりこむ        
b.中間領域の工夫をする    
c.オープン・ガーデンをつくる        
d.アプローチガーデンをつくる        
e.建物際を緑化する        
f.ペットの居場所を工夫する        
g.鳥を呼ぶ仕掛けをつくる        
8.樹木 a.シンボルツリーを植える    
b.既存樹木を残す    
公共公益 1.道路空間 a.素材(舗装)を工夫する        
b.街路樹等で緑化する        
c.排水溝を工夫する        
d.電線(地中化)・電柱を目立たなくする        
e.サイン看板をデザインする        
2.広場・緑地 a.ポケットパークをつくる        
b.路地裏空間を作る        
c.緑道をつくる        
d.行き止まり道路を広場とする        


なお、ここで言う適用分類とは、道路幅員と敷地間口との関係から、まちなみ形成に一定の類型を見出し、以下のように整理したものです。

道路幅員と敷地間口によるまちなみ分類
  狭小間口敷地 一般間口
小幅員道路 4N
(道路幅員6m未満、敷地間口7m未満)
4W
(道路幅員6m未満、敷地間口7m以上)
  • 道路が狭く敷地間口が狭いと住宅の立面は見えにくい。特に直線道路ではその傾向が強い
  • 4m未満の道路や住宅が3階建だと囲われ感があり全体に暗い。車の通らない道では生活空間化している
  • 道路側が車庫と出入口で占められ外構要素がほとんどない
  • 敷地間口が広いと住宅を塀などで囲うため狭隘道路では閉鎖的で暗くなり住宅の1階部分は見えない
  • 4m未満の道路だと通路(フットパス)化している
  • 間口が広いので門塀生垣等外構要素があるが郊外に比べ中途半端
広幅員道路 6N
(道路幅員6m以上、敷地間口7m未満)
6W
(道路幅員6m以上、敷地間口7m以上)
  • 道路が広く敷地間口が狭いと家並みが良く見え密集感がわかる
  • 道路幅に比し住宅が小さくバランスに欠ける
  • 住宅は道路に接近しており1階は車庫と出入口で殺風景であるが、短冊状敷地では前面に引きがありまちなみは豊かである
  • 天空率が高く電線類が目立つ
  • 郊外型住宅に似ているがプライバシ−等から塀などで囲われ閉鎖的であるが道路が広いので暗くない
  • 住宅や外構に統一感なく不揃いでまちなみは美しくない
  • 道路幅と住宅の大きさはバランスがとれている


縦軸の「期待できる効果」では、期待できるまちなみ改善効果を大きく安心、快適、楽しみの三つにまとめ、それぞれをさらに4つの具体的な項目に分ました。

I.安心
圧迫感や危険や不安の解消など安心は基本的効果です。特に道路が狭く3階建ての建ち並ぶ都市型住宅地は通る人に圧迫感や不安感を与えます。また交通の安全や防犯、防災はまちづくりには欠かせません。
見る人に安心感を与える効果はまちなみに重要です。ここでは、
  • 圧迫感を緩和する
  • 通りを明るくする
  • 出入りの安全性を保つ
  • 領域・プライバシーを確保する
の4つの効果に分けました。

II.快適
不調和や無配慮の解消と温かさや落ち着きなど快適は望ましい効果です。見苦しいものを隠したり、統一した美しさを見せたり、柔らかい素材を使用したり、ちょっとしたスペースを確保すると、居住者にも通る人にも快適な空間が創出されます。ここでは、
  • 隣家・通りへ配慮する
  • ゆとりをつくる
  • 調和した穏やかさを出す
  • エコロジー(生き物との共生)
の4つに分けました。

III.楽しみ
安心で快適なまちなみができてもそれだけでは個性がなく単調で今一つ魅力に欠けてしまいます。楽しみは生き生きとした効果を表わします。住む人の工夫で季節や地域性が感じられたり、独自のアイデアによる個性を建物や外構に取り入れると楽しみが期待できます。ここでは、
  • 地域特性を活かす
  • 季節を感じる
  • 風情・街の記憶
  • 住まい手の演出を促す
の4つに分けました。


そして、各項目に対し、具体的な事例写真を集めました。本来、各事例について期待できる効果は複数ありますが、今回は、見やすさのために、一つの事例写真に対し、体表的な一つの効果を上げています。
また、各項目には「改善レベル」という指標を上げています。これは、現実化の難しさを以下の指標で示しています。
ただし、「公共公益」の改善レベルは、工事そのものの難易度を示しています。
  1. 新築レベル
  2. 改築レベル
  3. DIYレベル