応募部門 住宅
受賞者名 守山登建築研究所 守山 登
作品名 味の店いせや(藤井邸)


●まちなみ配慮のポイント
 蔵の街と知られる川越の観光地化してきている大正浪漫夢通りに面する敷地である。この通りは、明治末〜昭和初期の洋風町屋や蔵造りの建物などが今も残っている。その雰囲気を守りながらの新築である。
 当時の建物が全てそうであったわけではないが、現在残されている洋風町屋の建物の特徴として2階部分に3つの縦長窓などを設けている。また、屋根部分は木編み網代ボールトという無垢の木材でボールトを組み、内部空間を豊かにすると同時に通りからも見上げることができ通りのシンボルとなるよう期待している。新たな建物が、町の特徴を継承し新しい物を入れていくことで町並みが活性化していくと考えている。

講評
 1階に店舗を持つ3階建ての併用住宅で、蔵造りの店や看板建築の建物が並ぶ、和洋こもごもの川越の町に建つ。設計者は歴史を生かしながら、新たな展開を加えようとしている。外から連なる内での大胆なデザインも魅力的である。大正浪漫夢通りの古い町並みに、しっとりととけこんでいる。まるで昭和初めの銅版葺き商家のようで、既に年月を経たような風格さえある。隣家に馴染ませた2階までのファサード、そして大胆にボールト屋根を見せた3階部分は絶妙に調和し、違和感なくその存在を主張している。黒い石(磯黒)を使ったモルタル洗い出しの外壁と、木編み網代ボールトに銅版葺きの屋根と、歴史を紡ぐ材料選定にも気が使われている。3階部分での大胆さもあって、現代時点の主張があり、昔からの町並みを生かす可能性を示していよう。昔の佇まいに快適な暮らしという提案である。

「まちなみ住宅」100選 審査委員会
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