北欧流『ふつう』暮らしから読み解く環境デザイン
子どもたちの環境
(3) 保育園
フィンランドのチャイルドケア法(保育法)は、日本よりずっと早く、1973年に施行されました。日本では保育園と幼稚園の2つがありますが、フィンランドではその区分が1973年に無くなり、6歳以下の子どもの多くは保育園に入ります。保育と教育を一体のものとして捉えている点に先見の明があると考えています。
大事なことはフィンランドでは保育園を「日々の家」(Päivä=日々の、Koti=家)と呼んでいることです。幼稚園でも保育園でもない「日々の家」が子ども達の生活環境となっています。
基本的に異年齢を混ぜる保育・教育が行われ、大きくは1〜3歳と3〜5歳の2グループに分けられます。保育士の配属人数はチャイルドケア法で規定されており、1〜3歳児16人に対して保育士4人(1:4)、3〜5歳児21人には3人(1:7)の保育士がつきます。日本と比べて子どもに対するスタッフの人数が多いことは、フィンランド社会の中で「社会全体で子どもたちを育てる」という考えが浸透していることの現れであると考えられます。私がお話を伺った保育士の方々は、自分たちが親の代わりという意識を持っているとのことでした。ただ観察していると、日本の保育士のように一緒に遊ぶというものではなく、一歩引いたところからじっと見守っているということがフィンランドの保育士の特色のようです。
日本の保育園では1つの部屋の中で遊ばせていますが、フィンランドの保育園では、いくつかの部屋を使い分けて、ばらばらに遊ばせています。全ての園舎は、ホームエリアと呼ばれる、いくつの部屋と通路・廊下の動線でつくられる「空間的まとまり」があり、子ども達が自由に遊ぶ様子をスタッフが見守る環境がつくられています。
園庭には傾斜がついていることが多く、これはフィンランドの雪の多さを利用して、そり遊びなどゲレンデとして活用でできるものです。土日には地域に開放されています。
フィンランド人にとって森林は慣れ親しんだ環境であり、保育園でも園児たちを頻繁に近所の森へ連れ出し、思い切り遊ばせています。そして雨や雪がふっても、「悪天候だから屋外へ出ず園内で遊ぶ」とは考えず、悪天候には、悪天候にあわせた着替えをして外で遊んでいます。マイナス10度を下回ると凍傷の危険性があるので、その時は外に出ないといった管理もきちんと行われています。
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