高齢者向け住宅に関する自立支援と
認知症高齢者の心身機能維持との関係性
パナホーム株式会社 エイジフリー事業推進部
(1) パナホーム×三浦研究室 (大阪市立大学) 共同研究プロジェクトの背景と目的
三浦研究室 (大阪市立大学) は、環境行動理論に基づく高齢者施設や住宅の計画・設計・研究を行っています。三浦教授は、高齢者向け住宅はすまい手が主役であり、「介護される場」から「生活の場」へ変えて行きたいとのお考えをお持ちでした。さらに研究室には、ハード (空間) とソフト (運営) のどちらにも造詣の深い、理学療法士の研究員の方が在籍しておられました。
一方で、当社では、これまでに建てさせていただいた建物での実際の暮らしを知りたい、“その人らしい生活”を送るためには、どのようなハード、ソフトが必要なのかを知りたいと考えていました。サ高住に併設したデイサービスで自立支援のためのアクティビティが行われていますが、どの程度の効果があがっているのかという問題意識がありました。高齢者住宅には、介護事業が成り立つことに集中し、利益を追求した過度なサービス提供になるケースがあります。一律な介助、過介助が自立の妨げになるのではとの懸念がありました。
両者の考えが一致し、環境 (ハード、ソフト) の違いによって、入居者の生活動作にどのような影響を与えるのかを探ることを目的とする、共同研究を行いました。
(2) 研究の方法
高齢者の「できること」は、入居している施設、介護度、認知症度、個人の特性によって異なります。そのため、主に当社が建てさせていただいた15件の施設入居者125人を対象に、手段的日常生活動作 (IADL) における「できていること」と「していることの」の差と、施設におけるハード・ソフトの違いの関連性を調査しました。
例えば、洗濯の能力について、ソックス・靴下のゆすぎなど簡単な選択の能力がある場合は能力1点と評価します。洗濯の実施状況について、全て他人にやってもらっている場合は実施状況0点と評価します。この方の洗濯における「IADLの能力と実施状況の差」は、1点となります。
施設15件の情報を、スタッフに対する聞き取り、アンケートで収集しました。7件が住宅型有料老人ホーム、7件がサ高住、1件がその他高齢者向け住宅です。居室面積概ね18m²タイプでした。
さらに施設の併設サービスを調査しました。併設サービスとは、施設に併設された施設・サービスのうち、入居者の半数以上が利用しているものです。デイサービスが5件、小規模多機能2件、定期巡回訪問介護2件です。特定施設は3件です。その他の3件は、併設サービスがない、併設している施設はあるがその利用者は入居者以外のところです。
入居者に関する情報は、入居者との直接面談による評価・聞き取りで収集しました。入居者は要介護1〜3です。施設1件ごとにおよそ10名としました。
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