【第二部 座談会 】  
19:20〜20:30
     

Question:

 今から10年前にバリアフリーについて、北米・カナダでの文献を読んだことがある。日本ではバリアフリーと言えば段差の解消などが主に着目されるのだが、北米では空気環境や温熱環境など五感に関するものが取り上げられていた。今回紹介頂いた『 Millcreek 』はそういう発想に近い部分が大きいと思うが、この考えに至るまでどのくらい期間を要したのか?

Answer:

  EBH は一昨年の10月(平成16年)に発足した。しかし新しい事を始めたというよりは、これまでやってきたことの延長で健康を軸にとって、まとめたという感じだ。

 
Question:

 環境のシステムが標準装備になったとの事だが、コスト面での負担はどのようにしているのか?特に全館空調だと、イニシャルコストはまだしもランニングコストの負担が増えることはないのか?

Answer:

  ランニングコストはそれほど高くない。気密性能が高いのでそれほど負担にはならない。年間平均毎月9千円くらいである。

   
Question:

  イニシャルコストは?

Answer:

 今、機械換気が義務化されているので、更に個別エアコンを設置することを考えるとそれほど高い負担ではない。

Question:

 24 時間の室温が一定なことをもうちょっと強調してもいいのではと思う。高気密・高断熱・全館空調ということによって温度変化がないということを、比較して見せたほうが分かりやすいと思います。

Answer:   温度が違わないということを見せた方がいいということですね。そこはデータではなく体感して頂いた方がご理解頂けるのかな、と考えている。実際に展示場や体験宿泊施設などがあり、そちらの方で、空調や温度差など変化がないという環境を体感して頂く。現象そのものよりも、それが健康にどのような効果が得られるのかを分かって欲しい。
Question: パンフレットに出ている「健康ダイヤル24時」というものは、この住宅を購入した際、 24 時間 365 日無償で利用出来るものなのか。24時間サービスは標準装備か?
Answer:

そのとおりで標準サービスの一部です。

Question: 室温の変化があまりない高気密・高断熱住宅は高齢者にはいいのかもしれないが、子育てにはどのような影響があるのか?子供の感性は3歳までに確立されると聞いた事があるが、温度に対する適応能力が下がるのではとも思う。あまりに快適な状況を与えるとどんな子供に育つのか気になる。
Answer:

確かに温度のバリアフリーともいいますが人間の順応性を退化させるどうかは本当に難しいところで、温度のコントロールに関しては心筋梗塞などに関連させて、高齢者にアピールしていく。子育てに関しては難しい問題だ。今後の課題でもあると思う。

   
Question:

例えば、高齢者のリハビリなど、いろんな研究者の係りや、いろんな考え方があって、このプロジェクトの意味があると思う。国としてではなくて、参加している企業によって取り組み方や内容の違いはあるのか。

Answer:

経産省としては、おそらく今の段階では答えをひとつに絞るのではなくいろんなビジネスモデルを支援するという方向性と思われる。多様な事を若干違った視点で様々なビジネスモデルが展開されていって活性化に繋がれば、という考え方であることから、各々の企業のサービス内容は必然と異なってくると思います。

Question:

参加企業同士でのコラボレーションはどうか?
Answer:

当該事業では、複数の事業主体が連携・協働する「コンソーシアム」形式で実施していることから単独参加は出来ず、必ずコラボレーションになる。地域の波及効果等を考え、地方公共団体を巻き込んだモデルが多い。平成 16 年度に採択された大阪府・大東市の事例では、大阪産業大学、ハウス食品、デサント等に加え、吉本興業が協力することで、「運動」と「メンタルケア」に「笑い」を織り交ぜた“出前”形式の運動プログラムを提供し、高齢者の体力が維持・向上することで将来の高齢元気者の増加を図り、更には医療費・介護費の抑制に資することを目的とした事業があった。これは平成17年度には更に各地に事業を展開している。

   
Question:

経産省の取り組みに関して厚労省はどのような反応をしているか。

Answer:

:厚労省はモデル事業の実証に一定の理解を示しており、成果発表会でも基調講演を行なう等、積極的な情報交換や連携が図られている . 。なお国交省は、平成17年度から「健康サービス」分野に加えてモデル事業を実施している「集客交流サービス」分野で連携が図られています。

 
Question:

ドイツの事例が興味深かったが、ドイツは一般的には健康というよりも地球環境に優しいという考えだと思う。今回ご紹介頂いたような健康という軸も大きく掲げられているのか。

Answer:

ドイツは州政府組織ですが、バイエルン州が「環境にやさしい健康住宅のガイドライン」というものを作り、環境と健康をセットで考えているようだ。健康面では自然素材塗料が一般的だ。ドイツでは他にも健康にやさしい自然素材の建材なども積極的に採り入れられている。

Question:

ドイツの例ではどのくらいのレベルで規制があるのか?具体的な建築材料の名称まで表記されているのか。

Answer:

具体的なグラフや数値を用いて書かれている。壁の断熱性能なども数値を用いて表記されている。面白いことに、新築用と改築用のガイドラインが2種類ある。両者とも同じくらいのボリュームだ。改築の方が市場が大きいようで、改築のガイドラインにも力を入れている。このことからも、日本に比べ、改築に対する意識が高いということが伺える。 また、環境と健康が相反するもので、矛盾するものと捉えていない。ごく自然に一緒のものとして考えられている。

 
Question:

2月完成予定のドイツ型の実験住宅は北米型とは相当違うものなのか?

Answer: だいぶ違う。北米型の高気密・高断熱は湿気を遮断する。しかし、ドイツは湿気を遮断しない。壁に呼吸させる。また壁内部の充填断熱と外断熱を組み合わせた複合断熱システムを使用しています。