【第二部 座談会 】  
19:20〜20:30
       
 

Question:

 25年前から、200戸単位の開発を盛んにつくってきた。そのとき購入をしたのは30、40代が多く、その世代が今、一気に高齢期を迎えている。地域によっては高齢者率が50%を超えるところもある。そのような地域に関してはどのように考えているか?


Answer:

 年代によって意識に差がある。団塊世代より上は、不動産の所有権は男性であるように、男中心の社会である。一方、団塊以降の世代というのは経済の実権が女性に移りつつあり、共同所有が半分以上を占めている。
また高齢者には、いいものを実際作って、現物を見せるのが一番。それがいいと思えば移り住む、それくらいの資金は持っている。
そのとき持ち家は別荘のようなものとして残すことが多い。しかし実際住み替えると、意識がガラっと変わることもあり、現場の動きの方か速いというのが実状である。
願わくば、賃貸に出すとしても、バブルみたいに高家賃ではダメ。市場原理を見て、相応な家賃で提供するべきである。そうすれば若い人は帰ってくるだろう。


Question:

 グループで住む住まい。よりよい生活をするために移り住むのだと思うが、一度住んだとき、10年経って介護が必要になって循環が滞ってしまった場合、その後の移り住むステップは用意されているのか?

Answer:

 重要なテーマだと考えている。健常のときはいいが、要介護、重度になったら…。グループホームのようなものは必要になってくるだろうと。そのときには、有料老人ホームやグループホームよりはもっと良いものが供給されるべきである。有料老人ホームなどは入居金が高く、途中で出るに出られない。

 
Question:

 イキイキと住むために、介護サービスは地域で必要か?

Answer:

 当然必要となる。訪問介護とデイサービスを提携していくことで、よりよい質になっていく。
藤沢に活発に事業を展開している主体があるが、そこは町中に9つの施設を持っている。そこは、地域の拠点にもなり、高齢者が集まりパーティを開催するなどしている。さらにそこでは子供も遊ぶ場がある。また、このような施設の就労者を考えるとき、主婦が一番だと思う。こうした地域ビジネスの展開も考えられるのではないか。

 
Question:

 ライフリー荏田に関して、今の居住者が移り住む前はどこに?

Answer:  子供が東急沿線で、親はあちこちの地方に一人暮らしで住んでいた。親が心配になった子供が、安心できるようにと呼んだケースが多い。
当然、居住者は地域になじみがない人ばかりなので地域にうまく溶け込んでいくために、まず地域を引き込むことを考えた。食事会や音楽会など。しだいに新しいコミュニケーションを求めて居住者が外に出ていくようになる。高齢者にとって一番いいのは、外に出かけてイキイキとしてもらうこと。

Question:

 有料老人ホームから移り住んできた人がいるのか?


Answer:

 二人いる。その人は自宅、有料老人ホームと両方とも持っていた。有料老人ホームは価格が高い、さらに回りの高齢者は要介護の人ばかりだと。元気になるためにライフリーに住み替えてきた。


Question:  そのような方は、具合が悪くなったら有料に戻るのか?
Answer: 現在は、ライフリー荏田には在宅医療のかかりつけ医がいるので、終の住処と考えている。
Question:  有料老人ホームとライフリーの違いは?
Answer:  地域で何かしようとしている、地域資源(例えば食事ボランティアなど)を生かすという面でも。そのへんはNPOでもできるということが分かった。
Question:

 新しい同居の形なのかなと思う。夫婦二人で住んでいたらなかなか地域を離れられない。元気なうちは住み慣れた地域で暮らしたいだろうし。移り住んだ方々というのは、何らかの動機があったのか?

Answer:  やはり怪我や病気に対する不安が大きい。住み慣れた地域のしがらみを振りほどいてでも、安心して暮らせる住まいを求めている。
 
Question:

 ライフリーに住んでいる人は、積極的に人生を楽しもうという高齢者が多いと思うが、中には個性が強い人もいると思うが、コーディネーターの重要性については?

Answer:

 ライフリーにはスタッフが6人いて、彼らがパイプ役になって問題は解消している。人間不思議なもので、住み始めるとたいした問題ではなくなってくるようである。
また、コーディネーターの役割について、有料老人ホームとの違いだが、ライフリーのような施設は2つの面のコーディネーターの存在が決定的。
@ 入居者の相談、緊急通報などの対応
A 地域とのかかわりあいの実施
この2つの面のうちどちらか一つが欠けてはうまくいかない。有料老人ホームはAが欠けても成り立っているようなところがある。総合的に見ると有料老人ホームは企業みたいなもの。だからコストが高くつく。その点、ライフリーは地域力で負担するのでコストをはるかに安くできる。
さらに入居後の移動に関しても、有料老人ホームは移動しづらい。入居一時金が高いから。ライフリーは最期まで自由を保持していられる。

 

Question:

 郊外団地では高齢者が増えてきている。そういう人たちは高齢者向けの住宅情報誌などを見てもピンとこないものなのか?住み慣れた地域に安心できるものが建ち、自分の目で確認しなければ、安心できないのか?

Answer:

 大阪の千里NTの話だが、今では企業の重役の人が多く住んでいる。そういう人たちに理屈だけで説明をしても、文句を言うだけで動かない。ならば住み慣れた地域に、誰かが楽しい姿、雰囲気を伝えれば次第に納得してもらえるのではないかと思う。
そこで提案として、各住宅メーカーで団地、共同住宅でも一番得意な場所で、一つずつ実験をしてみてはどうだろうか?何社かやったら世の中は確実に動き出すはず。今でも、少しずつそういう動きはあるのだが、まだ世間はリタイア層をただの老人と思っている。本人たちは現役そのものなのに、今がチャンスなのでは。
その場合、今は銀行にお金を借りるよりも直接金融の方がいい。
一棟貸しの場合、地主がいて→土地を貸す→建物を建てて、借り入れる。
地主にとって入居が続くかが不安になる。この不安を企業が負担することで、地主の不安を解消できる。建物代は企業がもらうことになる。
その後の運営はNPOに任せてもらえればいい。そこらへんはテストを含めてやってみてはどうだろうか?


Question:

 安心ハウスについて、思ったより普及していないようだが。ネックは何なのか?供給するディベロッパーの欠如が問題なのか?

Answer:  建てられるところにまずはやってみることが大事。先に採算を考えるから踏み込めない。地主には、「相続税を回避して土地を持ち続ける」と思わせる事業が必要である。住宅関連企業はハードだけしか供給していない、ソフト提案も事業として組み込んでいかなければならない。