総 評
コロナ感染症も5類に分類され多くの応募作品が寄せられることを期待しておりました。しかし学校からのクラス単位での応募が減り、小・中学校ならびに高等学校における教育課程への変化に対応すべく学校現場での忙しさに応募数が減ったのではと推察しております。しかし、そういう状況下でも、とても質の高い作品が集まり、審査員一同、真剣に作品を読み審査に臨みました。
審査基準としては、家やまちに対する作者の想いや愛着が伝わってくる作品であること、その想いを皆で共有したくなるような展開であることなど、大まかな基準はありましたが、基本は応募作品をじっくりと読ませていただき、審査員の方々と活発に意見をかわして選びました。
具体的には、大きく@テーマ・素材、A筋立て・展開のしかた、B絵や文章による表現の3 点に加え、審査員一同じっくりと話し合い「心に強く響く作品」を選びました。
全体として「生きること」への深い愛情が底辺に流れている作品が多いと感じました。家族内や地域やまちの日常における「人とのかかわり・つながり」の経験を通しての作品や年齢や家族構成に偏らない多彩な視点の作品、さらに表現力を豊かにしている素材や材質へのこだわりなど創意・工夫を感じる作品との出会いに充実した審査の時間と感動の出会いの時間を過ごすことができました。
特に、異常気象による災害への視点、社会的な課題に関して内面から深堀した作品、大人の都合による一方的なあそび場の閉鎖、さらに多彩な視点や発想の豊かさによる魅力的な作品、表現力の確かさに感嘆しながら審査員一同が多角的に意見交換を行い、素敵で魅力的な作品を審査できる喜びに浸ることができました。
詳しいことは各作品の講評をお読みいただきたき感動の共有をお願いします。
来年度も多彩な発想力や表現力による魅力的な作品が応募されることを期待しております。
2023年9月
第19回「家やまちの絵本」コンクール審査委員長
東京学芸大学 名誉教授 小澤 紀美子
審査委員 | 応募総数 : 743作品 | ||
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小澤 紀美子 | (東京学芸大学 名誉教授) | 子どもの部 | 234 作品 |
志村 優子 | (まちづくりプランナー) | 中学生・高校生の部 | 450 作品 |
仲 綾子 | (東洋大学 福祉社会デザイン学部 人間環境デザイン学科 教授) |
大人の部 | 28 作品 |
北方 美穂 | (あそびをせんとや生まれけむ研究会 代表) | 合作の部 | 31 作品 |
志村 直愛 | (東北芸術工科大学 芸術学部 歴史遺産学科 教授) |
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鮫島 良一 | (鶴見大学短期大学部 保育科 准教授) | ||
原田 佳道 | (国土交通省 住宅局 住宅生産課 木造住宅振興室長) |
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嘉藤 鋭 | (住宅金融支援機構 マンション ・まちづくり支援部 技術統括室長) |
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松尾 知香 | (都市再生機構 総務部 広報室長) | ||
平松 幹朗 | (住宅生産団体連合会 専務理事) |
モエちゃんのたて穴住居つくり |
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安藤 邦緒 (岐阜県) | |
講評: テレビのニュースをきっかけに「たて穴式住居づくり」に挑戦する家族の取り組みを「仕掛け絵本の技法」を使って制作した力作です。ページをめくるごとに、穴掘りから屋根葺きまで、だんだん出来ていく住居の姿にワクワクします。完成を祝って皆んなで縄文時代の食事を摂ると、夢の中まで縄文時代の自然が飛び出してきます。 |
はなちゃんちの かぞくかいぎ |
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平尾 郁穂 (神奈川県) | |
講評: 色鉛筆の丁寧な着色が印象的な美しい作品です。空き地に家を建て引っ越して来た「はなちゃん一家」と、この空き地を棲家としていた虫たちとの出会いや交流、共存の様子が楽しく描かれています。家族会議に虫たちも参加するところが可愛いですね。全編にやさしさが溢れていて、読んだ後、幸福な気持ちになりました。 |
オモイデ |
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橋 俊英 (福岡県) | |
講評: 空き地に立っている一本の樹木を中心に、その地で暮らしてきた人々の営みの歴史を確かな画力で表現した絵本です。町の変化、子どもたちの遊び、人間の成長、初恋の告白、歳を重ね世代が巡って行く様子が木からの優しい眼差しで描かれています。時代の中で変わるもの変わらないものがあることを、この木が教えてくれているようです。 |
どんぐり村のアパート |
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高林 ひろみ (愛知県) | |
講評: どんぐり村の動物たちの四季の暮らしの様子が丁寧に美しく描かれています。動物たちの特徴をとらえた動きや佇まいがよく表されていて、生き物に対する作者の愛情を感じます。周りに広がる森の様子も季節の変化とともに微妙に色合いが変化していて、ゆったりと目を楽しませてくれます。後から作者が81歳の方と知りびっくりしました。 |