総 評
2年目を迎えたコロナ感染症拡大による緊急事態宣言に伴う行動自粛期間が長引き、応募数が減るのではないかという危惧が打ち消されるほど、過去最多の方からの応募があり、審査員一同皆さまの期待に応えるべく真剣に審査に臨みました。審査基準としては、家やまちに対する作者の想いや愛着が伝わってくる作品であること、その想いを皆で共有したくなるような展開であることなど、大まかな基準はありましたが、基本は応募作品をじっくりと読ませていただき、審査員の方々と活発に意見をかわして選び ました。
結果として、テーマ性に関しては着眼点や発想がおもしろいこと、展開性に関しては独創的で筋立てが明快であること、表現性 に関しては絵と文章が生き生きと表現されている作品が選ばれたと思います。すなわち審査員がそれぞれ分野別に作品を読み、推 薦作品を申告し、最終的には全員で話し合いながら決めました。
在宅時間が長かったのかじっくりと取り組んだ作品が目につきました。従来には無い視点からの発想や未来への展望をしっかりと見通して進むべき方向性を確信している作品、暮らしには地域の方々との温もりの交流の大切さを訴えた作品、お子さんが次のページを早く開いてみたいというワクワク感を引き出す立体的表現が満載の作品、日常の穏やかな暮らしを早く取り戻したいという願いと愛情にあふれるお孫さんとの温もりの交流を方言で表現した作品など、想像力と創造性にあふれる作品に審査員は感動しておりました。詳しいことは各作品の講評をお読みいただきたいと思います。来年度も多彩な発想力や表現力による魅力的な作品が応募されることを期待しております
2021年11月
第17回「家やまちの絵本」コンクール審査委員長
東京学芸大学名誉教授 小澤 紀美子
審査委員 | 応募総数 : 1,921作品 | ||
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小澤 紀美子 | (東京学芸大学 名誉教授) | 子どもの部 | 669 作品 |
町田 万里子 | (手作り絵本研究家) | 中学生・高校生の部 | 1,143 作品 |
勝田 映子 | (帝京大学 教育学部 教授) | 大人の部 | 35 作品 |
北方 美穂 | (あそびをせんとや生まれけむ研究会 代表) | 合作の部 | 74 作品 |
槇 英子 | (淑徳大学 総合福祉学部 教育福祉学科 教授) | ||
前田 豊稔 | (豊岡短期大学 通信教育部こども学科 准教授 アートハウス西宮 代表 |
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前田 亮 | (国土交通省 住宅局 住宅生産課 木造住宅振興室長) |
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嘉藤 鋭 | (住宅金融支援機構 マンション・まちづくり支援部 技術統括室長) | ||
藤島 靖久 | (都市再生機構 広報室長) | ||
小田 広昭 | (住宅生産団体連合会 副会長・専務理事) |
マダム・ミロバ おひっこし |
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おの みどり (愛知県) | |
講評: こんなステキな引越しがあったのか。いろいろなお家に住みたいけれど、引越しが少々めんどうになってきたマダム・ミロバ。思いついた新しい家体験の洒脱な方法。軽やかで愉快。思わず笑ってしまいました。こんな引越し絵本は、希林さんのような人が描いたのかしら。 |
だんちの おひっこし |
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つるおか のぶえ (神奈川県) | |
講評: ごんちゃんの暮らすうみかぜ団地は、大勢の人が暮らす大きな団地です。古くなったので、建て替えをすることになりました。それぞれの家庭の引越しには、さまざまな事情があります。作者の眼差しは、団地の暮らしや引越しの様子にやわらかく注がれて、実話のような引越し物語になっています。ごんちゃんたちへのいとおしい思いが、温かな絵柄に表れているようです。 |
ぼくらのむらに |
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橋 俊英 (福岡県) | |
講評: 昔のような今のような、どこにでもあったような物語。ぼくらの村に、外国人がやってきた。何者なのだろう?何しに来たの?次々と好奇心や不信感がわいてくる。ドキドキしながら、そっと後をつけていくことにした。そしたら、・・・。 前作までの秘密基地に続き、またもこころ温まるぼくらの村の懐かしい思い出。ふるさとを失った私たちへの、プレゼントのような絵本です。 |