総 評
第16回「家やまちの絵本」コンクールではコロナ禍で応募作品が減るのではないかと危惧していました。しかし例年と比べても2割増しの応募作品があり審査員一同ほっとしたと同時に、審査の過程では至福の時を過ごすことができました。
昨年とカテゴリーの内容を少し変えました。子どもの部(小学生以下)、中学生・高校生の部、大人の部(18歳以上)の応募条件は変わらずに、合作の部を「子ども(小学生以下)と大人(18歳以上)の合作」の部と変更しました。今回の応募に変化がわずかにみられましたが、素敵な作品が多く寄せられました。
今回のいずれの部門においても特色的なのは、時間や空間を自由に飛びこえる物語があり、豊かな想像力に発想を得ている作品 に審査の時間は審査員同士の楽しいやり取りを楽しむことができました。カタチだけでは絵本としては成り立ちませんが、どこに「光り」を充てるかによって絵本というカタチにつくり上げていく発想力の違いが「物語」として読みとることができました。
受賞された作品は、人を想う力、人と人とのつながりを想う力、人と自然のつながりを想う力が描く絵にも言葉にも多様性があ り、温もりがじわぁ〜とこみあげてきて審査を終えた時には、その温もりを分かち合いたい感情に包まれていました。各作品の講評は受賞作品をお読みいただきたいと思います。「家族を通して見えてくる住まい」や「地域の人びとや友人とのつながりを通して見えてくるまちの明日への希望」の原点である「生きる」「愛」「勇気」など確かさと可能性を広げてくれる絵本に乾杯です。来年度も多彩な発想力や表現力による多くの絵本の応募がありますことを期待しております。
2020年11月
第16回「家やまちの絵本」コンクール審査委員長
東京学芸大学名誉教授 小澤 紀美子
審査委員 | 応募総数 : 1,694作品 | ||
---|---|---|---|
小澤 紀美子 | (東京学芸大学 名誉教授) | 子どもの部 | 413 作品 |
町田 万里子 | (手作り絵本研究家) | 中学生・高校生の部 | 1,201 作品 |
勝田 映子 | (帝京大学 教育学部 教授) | 大人の部 | 40 作品 |
北方 美穂 | (あそびをせんとや生まれけむ研究会 代表) | 合作の部 | 40 作品 |
槇 英子 | (淑徳大学 総合福祉学部 教育福祉学科 教授) | ||
前田 豊稔 | (豊岡短期大学 通信教育部こども学科 准教授 こどもにはもっと自然を「ナチュラル アートハウス」 代表) |
||
遠山 明 | (国土交通省 住宅局 住宅生産課 木造住宅振興室長) |
||
山崎 コ仁 | (住宅金融支援機構 地域支援部 技術統括室長) | ||
藤島 靖久 | (都市再生機構 広報室長) | ||
小田 広昭 | (住宅生産団体連合会 副会長・専務理事) |
なっちゃん と まほうの音ぷ |
|
山岡 桜 ―福山市立光小学校5年(広島県)― | |
講評: 森の中で遊んでいて不思議な家を見つけたなっちゃんと仲間。そこはお母さんが買い物に出かけた一人の女の子の不思議なモノがいっぱいある家。開いた楽譜から飛び出した音符をみんなで探し回わり、暗い森の中で光る音符を見つけ出すというユニークな発想の絵本。わくわくと心おどる展開ストーリーに引き込まれていく傑作な絵本です。 |
いわお君のぼうけん |
|
枚田 結衣花 ―芦屋市立浜風小学校5年(兵庫県)― | |
講評: 川沿いに住む岩の親子4人が嵐で流され、河口の海辺で再会するものがたり。紙をちぎって 作った立体感のある主人公家族の岩の質感表現が巧みで、削られて次第に丸くなっていく岩たちの表現のユニークさや川の流れや自然の植物など、シンプルだが迫力があり、色彩豊かな表現が素晴らしい絵本です。 |
いえから まちへ |
|
安藤 邦緒 (岐阜県) | |
講評: 原っぱに一軒家が建った。そして、もう一軒建った。それから、どんどん増えていった。ページをめくる度に、思わず「わぁ〜!」と声が出てしまう。家が本当に建ち上がるように仕組まれた立体絵本だから、インパクトが強い。ことばは、あまり使われていない。絵が語る。見れば、それだけでよくわかる。これぞ絵本の真髄、見事である。 |
ボクの山部屋 |
|
橋 俊英 (福岡県) | |
講評: ボクの秘密の最高の場所を教えるよ。そこは家のうら山にあるんだよと始まる前作「山部屋」の主人公は、中学2年生になっていた。成長とともに物語もリニューアルし、グレードアップしている。しかも、ハラハラドキドキする青春物語まで生まれており、まちがいなしのみんなの夢、秘密基地物語りになっている。さあ、今日もまた秘密基地の「ボクの山部屋」に行こう。 |