総 評
第15回「家やまちの絵本」コンクールに全国から寄せられた作品は、昨年に引き続き多くの絵本の応募があり、とても充実し た内容で読みごたえがありました。審査員は応募いただいた作品のページをめくるたびに次々と表現されているファンタジーの世 界に至福の時を過ごすことができました。さらに人と人、人とモノ、人と自然、人と社会のつながりの想像力と創造性の多彩な表 現に感嘆の声を上げながら審査を進めておりました。応募いただいている作品を通して、日常の暮らしの豊かさやしなやかさ、温 もりが確認でき、未来への希望に深い感動を覚えました。
予備審査を経ての審査対象としての作品には、年齢に関係なく作品を構築する発想の豊かさが見いだされました。審査の基準は、 テーマ・素材、筋立て・展開のしかた、絵や文章の表現、の大きく3 つの観点から審査員一同、それぞれの専門領域の立場から 意見を交換して、最終的に表彰作品を決めることができました。
その中でも、小学生の部門の応募の中に、人生100 年をみこした「元気のもと」を各年齢別に表現した作品やキャベツの瑞々 しい表現にとどまらず、キャベツの葉の重なりを折り込みで立体的に表現していて、その葉っぱの感触をお伝えできないのが残念 ですが、多彩な表現に審査員一同感激しました。
想像力豊かな折りたたみの絵本、とびらの向こうへの着想、生き物との豊かな交流、世界を旅したり、宇宙への発想の広がり、 立体仕掛けによる応急仮設住宅、男のロマンとしての隠れ家、お母さんとお子さんの魅力的な合作やクイズが隠されている作品な ど、笑顔が輝く家やまちが表現されていました。来年度も多彩な発想や表現力による多くの絵本の応募がありますことを期待して います。
2019年11月
第15回「家やまちの絵本」コンクール審査委員長
東京学芸大学名誉教授 小澤 紀美子
審査委員 | 応募総数 : 1,406作品 | ||
---|---|---|---|
小澤 紀美子 | (東京学芸大学 名誉教授) | 子どもの部 | 250 作品 |
町田 万里子 | (手作り絵本研究家) | 中学生・高校生の部 | 946 作品 |
勝田 映子 | (帝京大学 教育学部 教授) | 大人の部 | 32 作品 |
北方 美穂 | (あそびをせんとや生まれけむ研究会 代表) | 合作の部 | 178 作品 |
槇 英子 | (淑徳大学 総合福祉学部 教育福祉学科 教授) | ||
前田 豊稔 | (豊岡短期大学 通信教育部こども学科 准教授 こどもにはもっと自然を「ナチュラル アートハウス」 代表) |
||
遠山 明 | (国土交通省 住宅局 住宅生産課 木造住宅振興室長) |
||
山崎 コ仁 | (住宅金融支援機構 地域支援部 技術統括室長) | ||
藤島 靖久 | (都市再生機構 広報室長) | ||
小田 広昭 | (住宅生産団体連合会 副会長・専務理事) |
大好きな まち 大好きな 家 |
|
金子 みのり ―五泉市立橋田小学校6年(新潟県)― | |
講評: 4月から年が明けての3月までの一年間を通しての居住するまちや家の 暮らしぶりを月ごとに描いている絵本。小学校6年生の目を通しての暮らしや地域の生業が素直に描かれ、改めて子どもたちを取り巻く暮らし の彩りや四季による豊かな暮らしの行事を基本に日々の暮らしへの感謝が湧き上がります。 |
おもしろカブト&クワガタ図鑑 |
|
剱持 昴 ―相模原市立東林小学校2年(神奈川県) ― 剱持 花芽 |
|
講評: なんでもクワガタに見立て、おもしろい名前をつけたクワガタ絵本。ク ワガタの名前は絵本を読んでいただいてのお楽しみ。よく大人や暮らしの周りを観察している結果、生まれている図鑑です。クワガタの観察力 と表現力の確かさに感服する作品です。 |
おうごんのいちご |
|
中村 千結良 ―福岡市立堅粕小学校3年(福岡県)― | |
講評: ハロウィンの夜にもらった思いがけないプレゼントはキラキラ輝く黄金のイチゴでした。 埋めるとほしいものが出てくるというイチゴからはお菓をお菓子屋さんにすると大行列が…という夢いっぱいのストーリー。イラストがとても魅力的で、読者も思わず自分の夢を思い出したくなる絵本です。 |
はーとのまどからのぞいたら |
|
金ア 未和 白樫 茉素 ―由良町立由良中学校2年(和歌山県)― |
|
講評: 中学2年生の仲間2人が協力した、はり絵の絵本。ハート形の窓の向うに見える色と形を想像し、当てていく、遊び心のある絵本です。みずみ ずしい色彩に心が弾みます。ページの下方部に、お話に出てきたアリや木や地球を小さく描き添えているのも魅力的です。 |
すてきなまち どんなまち? |
|
菅原 裕花 須田 好美 ―武蔵野大学4年(東京都)― |
|
講評: 空き家がいっぱいのまちに越してきた、ひとりぼっちのおばけくんに誘われ、読み手は空き家問題や少子高齢化問題に触れていきます。まちへ の関心や愛着が、これらの問題の解決につながることをユーモラスにわかりやすく教えてくれるおばけくんの言葉に納得です。 |
ドア 〜ぼくのぼうけん〜 |
|
澤邉 勇太 ― 船橋市立大穴小学校3年(千葉県)― 澤邉 理子 澤邉 智宏 澤邉 貴子 |
|
講評: 始まりの文章がとても魅力的です。4人の家族が全員参加し、それぞれの持ち味を発揮して作られている絵とストーリーは、読む人を想像の世 界へ引込んでいきます。シンプルな美しい線と、豊かな色彩のちりばめ方は、まさに「さわべワールド」です。家族合作をこれからも続けてほしいです。 |
姫路市立姫路高等学校(兵庫県) |
|
1年生 全員 高桑 由雅 校長 | |
講評: 今年のコンクールの応募作の中で学校等の団体で応募された中で、たくさんの生徒さんが作品を作成しているにもかかわらず、一つ一つのクオリティーが高くて驚きました。さらには学校での最多応募という結果でした。これについては学校全体で本コンクールの趣旨を理解していただき、取り組んでいただいたものと思います。次回も楽しみにしております。 |