イスから考える住まい・まちづくりPART1

●学習のねらい

現代の生活では家庭内の創意工夫だけでは成り立たず、何らかの形で工業化製品を生活に取 り入れています。そこで私たちの身近に接している製品がどのように作られているかをその生産工程にまで発想を広げ、技術のおもしろさを考えさせます。 さらに工業化社会においては個別注文で製品が商品化されるのではなく、人間工学的な諸要素や使う人々のニーズを多角的に吟味し、それが使用される空間や他の製品との関連性をも配慮した上で、デザインが行われていることを知ることができます。
ものづくりから生活の質の向上に果たす技術の役割や環境、資源、エネルギーとの関連性の 視点でとらえていき、問題解決型発想を身に付けていくことができます。

●対象

中学校技術・高等学校(工業高校)〜大人

●ポイント

不断何気なく使っているイスから身体と人との関係、空間との関係を知り、想像力の翼を広げ発想力を豊かにしてくれます。

●材料

スケール、紙、パソコン<インターネット>

●学習の流れ

STEP 1 人とモノとの関係を知る
伝統的に日本の住居では板敷きや畳敷きの床に座る生活様式であったが、昭和30年代以降、日本住宅公団の住居が大量の供給され、ダイニングキッチン、子ども部屋に洋風の生活が取り入れられ、現代の子どもには「イス坐」の生活様式は定着している。

しかし、学校では小学校時代から身体の発達に合わない、平均値に基づいた勉強机とイスを使い勉強せざるを得ない状況を多くの生徒が経験してきている。身体を正常に発達させるためには身体にあった寸法のイスを使用しなければならない。
そこで「身体にあった」イスの重要性に気づかせる、つまり人間工学的な発想、人とモノとの関係を 寸法から知る学びを展開する。

<気づき・調べる>
(1)
生徒の自宅にあるありとあらゆるイスの寸法測定を自宅学習でさせる。
(2)
幼児期に使用したイスがあればそれも測定させる。
(3)
学校のあらゆるイスの寸法を測定する。
(4)
寸法の測定と同時にイスを構成している材料や材質を調べさせる。
木材、スチール、布、金物(留め金など)なども。
(5)
オプション:測定したイスの1つを図面化させる
<考える>
寸法測定だけでなく、幼児期に使用したイスと大人が使用するイスの大きさが、なぜ異なるのか、家 庭にある洋風便器を使用するとき家族の誰が使いづらいか、どうして使いづらいかなどを考えさ せる。

<調べる>
家族の身体の大きさが異なるのに平均値で造られた便器やイスを用いていること、便器メーカーや 学校のイスのメーカーは何の寸法を根拠にして製造しているのかも調べる。

STEP 2 モノと空間の関係を知る
イスにはさまざまな機能があること学ばせ、そのイスを配置する空間との関連性を知る。例えば、くつろぎのイスと作業を行う時に用いるイスでは形態が異なり、より一層、身体との関係を知ることができる。

<調べる>
(1)
身体とイスのかたちの関連性を探る。
<参考資料としてイスのカタログや有名デザイナーが設計したイスの写真も用意する>
(2)
イスが住居内のくつろぎの場、食事の場、勉強の場、作業の場でどのように配置されているか調べ る。インテリア雑誌で考えさせても良い。
(3)
モノとモノとの関係だけで空間が構成されるのではなく、人とモノ(イス)や他のモノとの関連で空間が構成され、人が歩くスペースや動作のためのスペースが必要であることが読みとれる。
例えば、ドアを開けたとき二人がどこに立ち、どれだけの空間が必要かを教室のドアで実践してみる。
さらにくつろぎのための部屋と作業を伴う部屋(例えば台所)では空間の「ゆとり」が異なることも知る必要がある。